Special illusion verBF
任務が始まるもっと前。 ずっとずっと前から気になっていたこと。 ミーの心に不安を掻き立てていること。
(ベルセンパイは本当にミーの事が好きなのか)
簡単な任務が終わって、意気揚々とアジトへと帰ろうとする彼の背中をみた。
いつだかミーに言った『愛してる』 頬に添えられた大好きな彼の手の温かさと、トクトクとうつ鼓動。
それは、何故か遥か遠くの記憶に思える。 サラサラと手の間をすり抜ける砂みたいに、現実感を掴めない。 ずっと態度が変わらないベルセンパイは、ふざけていたのかと疑ってしまうのだ。 ミーの頭の中はベルセンパイで埋められているのに… ポーカーフェイスと淡々とした口調に隠している、不安。
1人で勝手に走る彼に、速いですーと文句を言っても速度を落としてはくれない。 ミーに目もくれなくて、不安はさらに大きくなる。 リアルなのか、それとも幻想だったのか…あの言葉は。 心の中が石が溜まるように、重くなっていく。
知りたい。ベルセンパイのくれた『愛してる』が。
(確かめてもいいですかー?)
(ベルセンパイのミーへの執着心を―――)
「ベルセンパーイ」
名前を呼ぶと、あぁ?という素っ気ない返事。 多分、何をいっても適当にあしらわれるだけだろう。 だから、ベルセンパイを刺激する言葉を慎重に選ぶ。
「さっきの任務見て思ったんですけどー…
ベルセンパイってたいしたことですよねー」
ミーの言葉を無視して、とっとと帰ろうとしていたベルセンパイの足が大木の枝の上で止まった。
(…本気で怒った?)
それじゃあ意味がない… いつもみたいにムキになってくれなきゃ… 先を越して、振り返る。 わざとらしく、どうかしましたー?と声をかけてやる。
返事はナイフだった。
寸分違わず命中してミーの背中に銀のナイフ。 毎回のように幻覚で刺さったようにしているけど。
「おい、カエル…王子のことバカにするなんていい度胸じゃね?ここで死んじまえ!」
最後の言葉と共にまたナイフが飛んできた。 今度は避けた。
(単純な先輩…)
(煽りやすいですー)
「なら、ミーと勝負しませーん?」
「は?」
投げつけてくるナイフが止まった。 無表情でベルセンパイに向き直る。
「ですからー、ミーと鬼ごっこしてベルセンパイが勝ったら強いって認めてあげますー」
ここで、めんどいと言われたら全てが台無しだ。 やる、という言葉を心から願った。
「…いーぜ その代わり、王子が勝ったら一生お前俺の奴隷決定な♪」
『奴隷』。これが、姫とかなら良かった。 や…そもそも男なのに姫って言われて喜ぶのもどうかと思うが。 そういうとこに配慮しない彼に溜め息が出た。
「それじゃー行きますよー…」
右手をあげて、指パッチンの形を作る。 口角をあげて、今かいまかと待ち構えるベルセンパイ。
ベルセンパイが立つ枝の後ろ。 そこに、霧の幻覚を使って瞬間的に移動する。 突如として自分の隣に移動され怯む彼に、笑ってみせる。
「ミーのこと…ちゃんと見つけてくださいねー… あと―――――
ベルセンパイ、好きです」
言い終わると同時に指を鳴らした。
パチンっ…
深い森に、響く乾いた音。 音が消えるといれかわって現れる光景。
グシャグシャでドロドロとした気味の悪い、 血糊で染まった深紅の森 。 あっちにもこっちにもいる、ミー。 数は1000近くのおびただしい数。
ミーのワンダーランド
幻覚でつくりあげた世界
―――――――― ――――― ―――
「あ"ー…」
沢山のミーとベルセンパイから離れた木の陰。 自分で言った言葉が恥ずかしくて、頭を抱えてしゃがむ。
『ベルセンパイ、好きです』なんて言うつもりは無かった。 勝手に口から飛び出してしまったのだ。
遠くでは、ベルセンパイがナイフとワイヤーで幻覚のミーを消していってる。 幻覚とはいえ、自分が倒されているのはいい気分じゃない。
けど、いつものようにこそくな技をベルセンパイは使っていない。 作戦のないまっすぐな戦いかた。 あんなんじゃ、幻覚相手に秒殺されかねない。
よく見ると妙に顔が赤かった。 ミーの…告白に動揺しているのだとしたらすごく嬉しい。 そんな小さな希望をもってみる。
カエルのくせに卑怯だ、とベルセンパイの苛立った怒鳴り声が聞こえた。 確かに卑怯だとは思ったけど、これでしか確かめられない気がした。 シビア?理不尽?ミーだってそんなの分かってる。
(はやく…見つけてください)
ちゃんと見つけてくれるのか心配で堪らない。 もし、ミーに執着が無ければ見つけてくれない。
(命がけで見つけて)
ベルセンパイが見つけてくれなきゃ、ミーの心はズタズタに引き裂かれて死んでしまいそうだ。
ベルセンパイが見つけてくれたら、嬉しくて死んでしまいそうだ。
(どうか…ベルセンパイが見つけてくれますように)
さぁ 生き残れるのはどっちでしょう?
(ミーの嬉しい心?)
(ミーの悲しい心?)
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かつてないほどのグダグダでした(苦) なんとかして、歌詞のワードを入れたら大変なことにねorz 死ネタverもあったんですが、初キャラソンで死ネタはどうかと思い(^^;
ご閲覧ありがとうございます!
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