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苦い時間の後には


「このっ…バカガエル!!!!」

「ゲロっ!」


放送室に飛び込んだ瞬間、ベルセンパイに強く抱きしめられた。
頭と背中に手を回され、動けない。

痛いぐらいの力に、安心してしまうミーは重症だ。


「ぜってーに、何処にも行かせない

どんなにお前が俺を避けても離さねー」

覆い被さり抱きしめるベルセンパイの声は…ほんの僅かに震えてた。

そんな大好きな彼に答えるように、首もとに腕を伸ばし、しがみついた。

抱き返されると思っていなかったらしく、ベルセンパイはぴくりと動いた。
がっちりと絡み付く腕から這い出て、口をベルセンパイの耳元に近づける。


「ミー…分かったんですー」

「何が?」

いつもは不機嫌な声ばかりなのに、今は穏やかだった。

「どうやら、ベルセンパイがいないとミーは駄目みたいですー」


恥ずかしすぎる。
今のミーは真っ赤になってるに違いない。

聞き取れるかギリギリの声でベルセンパイは呻いた。

「気づくの…遅い」

前髪で隠れたベルセンパイの目元も林檎みたいに赤かった。
恥ずかしかったけど、嬉しさの方が勝った。


「だから、ミーはベルセンパイの隣にいてあげますー」

「いさせてくださいの間違いじゃね?」

「違いますー
ミーがいてあげるんです

ベルセンパイが他に好きな人がいたとしてもー」


ベルセンパイに抱き締められてる今も、あの二人の姿は瞼の裏に映る。
けど、どうでもいい。
ベルセンパイの隣にいれれば、それだけでミーは幸せだから。

彼女と目の前の彼がお似合いなのは分かっているから…―――



「なに…それ?」

この場に似合わない、呆けた台詞。
ミーの頭の端が熱くなった。
カーッとして頭に血がのぼる。


「ベルセンパイのバカっ!!!!」


胸板を思いっきり突飛ばして、体を離した。


「隠さなくったっていいじゃないですか!!ミーは知ってるんです!ベルセンパイに好きな人がいるのは!だから……」

これは逆ギレなのかもしれない。
でも、ベルセンパイに誤魔化して欲しくなかった。

「だからっ…」

ぐじゃぐじゃとした言葉を吐き出すと、一緒に涙も出てきてしまった。
泣き出したミーを困ったようにベルセンパイは見る。

「お前、なんか誤解してねーか?
俺がフラン以外を好きになるわけねーじゃん」

「だって…」


(言っていいの?)

(ベルセンパイに)

(他の子を抱き締めるのを見たことを)


「…昨日、他の女の人…抱き締めてたじゃないですかー…」

ビックリしたような、苦虫を潰したような表情を目の前の人物はした。
やっぱり、言わない方がよかったのだろうか?






「しししっ…ははっ…あははははっ!!」


(………)


目の前で急に笑いだした。
思わず、引く。
ミーが引くのを見てあせったのか、笑うのをやめたが、まだ体はひくついてる。
ミーを手招きするから、警戒しながら近づいた。
放送室のマイクの近くにある、紙…新聞部の発行した新聞を手渡された。

赤いゴシック体でデカデカと書かれた『号外』の文字。
そのしたに『我が学校のアイドル的存在、朝倉さんがカップル成立!』と…。


(…え?)


朝倉というのは、昨日ベルセンパイが抱き締めていた子だ。
その子が、名前は知らないが好青年との笑顔のツーショット写真が貼ってある。

(どうなって…)

「これで分かった?」

頭にベルセンパイが顎を乗せて背後から体重をかけられた。
そう言われても…

「さっぱりわかりませーん」

ハァ、と呆れれたため息をつくとベルセンパイが解説してくれた。

朝倉さんはベルセンパイの幼馴染みにあたり、いつも片思いの相談を聞いてたらしい。
そこで、ベルセンパイが(無理矢理)告白をするようにとりはかり、朝倉さんの恋を実らしたそうだ。
喜ぶ彼女が我を忘れてベルセンパイに抱きついたところをミーが見てしまったらしい。


なら…

「ミーの…勘違い?」

「そーゆこと♪」

「………」

今まで悩んでいたのが無駄になったようでミーの気分は一気に下降した。

(馬鹿馬鹿しすぎる…)


「まさかフランが嫉妬するなんてなー
カッワイー♪」

嬉しそうに、ミーの頬に頬擦りしてくるベルセンパイ。
『嫉妬』という言葉に羞恥心がでた。
あんなに毛嫌いした言葉なのに。

色々と悩み、ミーを泣かしたベルセンパイ。
おまけに大好きなメロンパンが潰れた。
別にセンパイが悪いわけじゃないけど、ちょっぴり仕返ししたくなった。

(たまにはいいですよねー)

背後から抱きつく彼にもたれかかると仕返しをしてやった。
わざとらしく甘ったるい声と、上目遣いで涙目になって。
全部ミーの演技。




「ミーは、ベルセンパイが大好きなんです…////」





何故かベルセンパイがカチコチにフリーズしてしまった。
焦って、頬をつねってみるが反応はない。
王子のたしなみだとう頭のティアラを弄っても反応はなし。
流石にふざけすぎたかと、謝ろうとすると―――


「フランが悪いんだからな…」

「…へ!?」


体重を一気にかけられ、放送室のカーペットが敷いてある床に押し倒される。

「ちょ…!ベルセンパイ?!?!」


ミーの抗議は虚しく響くだけだった。

――――――――
――――
――

理性を壊してしまったベルがどうしたのか…それは、全校生徒に知れ渡った。
わざとなのか、放送アナウンスのマイクはONのままだったから。


(ミーがベルセンパイに言った言葉)

(演技の態度だけど)


(この思いは演技じゃない)




苦い時間の後には


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めちゃくちゃ長いですねorz
966HITの雅さまのリクで『ベルフラ♀で学パロ』です!
最後が力尽きクダクダになりすみませんでした!
それと、リンクして頂いてありがとうございますね♪
これからも一酸化炭素をよろしくお願いします!



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