それはパチパチと音を立てては、光に反射してギルガメッシュの瞳を輝かせた。

「綺礼、見よ!これはなかなかに面白いものぞ!」
「ラムネのどこが面白い。私には理解できないな」

綺礼はそう切り捨てて、手元の書類に視線を下ろした。切継のことが書かれた調査書を、何度も何度も読み返す。この男が今回の聖杯戦争において重要な立ち位置にいるのは間違いない。それと同時に、綺礼自身が何たるかを、導き出せるかもしれない存在なのだ。

ギルガメッシュはラムネの瓶を軽く横に振る。しゅわ、と小さな泡が弾けた。面白い。実に面白い。時臣の娘が置いていったラムネは、ギルガメッシュの好奇心を大きく刺激した。現世はなんと不思議なものを作り出したのだろう。この感動を吐き出したいのに、綺礼はそっけなく突き放して書類とにらめっこをしている。それをギルガメッシュは快く思わなかった。

「少なくとも、そこの紙切れよりは面白いぞ」
「言ってろ。ラムネなどたかが知れている」

綺礼は書類から目をはなさずに言った。

「 ラムネなんて、水にブドウ糖果糖溶液などの糖類を加えて酸味料や香料を用いた甘い炭酸飲料だ。ありふれた飲料水だろう」
「ふむ、よくわからん。もっとわかりやすく説明しろ」
「これ以上簡潔に説明するのは無理だ。おとなしく飲んで寝ろ」
「言葉を変えよう。とりあえず言いたいことはあれだ。せっかくこの我と話しているのだ。なぜ視線はずっと紙切れを見ている?」
「実は私は頭の後ろにも目があってな」

そうなのか、とギルガメッシュは不思議そうに納得して、またラムネに視線を移した。もやもやとした気持ち悪さが腹に溜まる。綺礼はこちらを見ない。手元の書類を見て、だんまりである。

「綺礼、」
「なんだ」
「綺礼、」
「だからなんだ」
「この畜生」
「なんだと」

がたっと座っていた椅子から立ち上がり、綺礼はギルガメッシュを睨み付けた。夜の闇のような瞳に、キラキラと傲慢な王が住み着いている。それを認めた瞬間、ギルガメッシュの胸はぽかぽかと暖かくなって、腹の気持ち悪さが消えた。

「そのまんまの意味だ。いずれわかる」
「お前はいつもそればかりだ。私は早く、私がなんであるかを知りたい。過程より結果を重視している」
「そう急くな」

気分がいい。目の前の男は不服そうな顔をして、重い息を吐き出すと書類を燃やした。ぽぅ、と火が部屋を照らす。

「まぁ我は今とても心が穏やかだ。どれ、らむねを分けてやろう」
「いらん。私はもう寝る」

そう言って綺礼は部屋から出ていってしまった。残されたギルガメッシュは、ラムネを口に運んでゆっくりと飲み込んだ。しゅわしゅわと、炭酸が喉で弾ける。あぁ、やはり面白い。



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「 切継のことばかり考える綺礼に嫉妬する英雄王 」でし た。ありがとうございました!

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