サーヴァントの中で群を抜いて細い腕を掴んで壁に叩きつけると、まるで赤ワインを溢したような瞳が痛みに歪んだ。

「うっ」

ギルガメッシュの短い呻き声が部屋に響く。薄暗い倉庫を照らすのは小さな窓から降り注ぐ月光のみで、それでも修行で鍛えた綺礼の目には十分だった。

滑らかな肌に手を這わすと、ギルガメッシュはピクンと反応する。その様子が可笑しくて、綺礼はクニクニと胸の突起をつねったり潰したりを繰り返した。

この倉庫の中で綺礼がギルガメッシュに何をしたって、彼は恐らくそのことを誰にも言わないだろう。相談なんて持ってのほかだ。高いプライドも理由のひとつだろうが、一番の理由は綺礼の師である時臣にある。


ギルガメッシュは時臣が好きだ。臣下の礼をとって、彼を尊敬し敬愛する、マスターでもある時臣が好きだ。時臣を見つめるギルガメッシュの目は酷く扇情的で、綺礼は見ていて面白くなかった。時臣は鈍くて気づかなかったようだが、ギルガメッシュの恋は誰が見ても明らかだった。

そんな時臣は、魔術の弟子の綺礼が自らのサーヴァントに欲情して襲ったと知ったら、きっと傷つき嘆くだろう。だからギルガメッシュは誰にも相談しないし、言わない。ただ黙ってその行為を受け入れているのだ。




「あ…ぅ、くぅ…っ!」

ぎちっとギルガメッシュの後孔が悲鳴をあげる。何度繰り返しても、ギルガメッシュは挿入だけは慣れなかった。歯を噛み締めて声を殺す。固く閉じた目からはじわりと涙が滲み出ていた。

「はっ、は、あ…っ」
「苦しいか、アーチャー」

なんとなく、綺礼は問うてみた。彼が苦しんでいるのは一目瞭然だったが、綺礼は敢えて問うてみた。

すると英雄王はゆっくりと瞼を開く。涙で濡れた瞳はよりいっそう赤くなっており、綺礼は美しいと思った。心が震えた。そうしてギルガメッシュは口端をひくつかせながら、笑みを顔に張り付けた。下手くそな笑顔だった。

「死ね」

ギルガメッシュがそう呟いた瞬間、倉庫の扉が開いた。突然入ってきた冷気に綺礼は眉をひそめたが、ギルガメッシュは目を丸くしたまま硬直した。突き抜けるような夜空を背景に立っていたのは、彼の好きな時臣だった。

「綺礼、それに王…?ここで何をしておられるのですか…?」

時臣の声は震えていた。それはそうだろう。「夜、倉庫に来てください」と弟子に呼ばれ来てみれば、目の前には口に出すのも憚られる情景が広がっていたのだ。

綺礼は笑った。なんという最高のタイミングで師は来てくれたのだろう。傑作だ。傑作すぎて、いつものポーカーフェイスは崩れて笑みさえ浮かんいるほどだった。

ギルガメッシュは泣いた。なんということだろう。最悪だ。慕っているものに他の男と繋がっているところを見られてしまった。悪夢だ。こんなことなら始めから抵抗していればよかった。そしたら別の結末があったのかもしれない。今更そう思っても後の祭りだった。

「師もご一緒にどうですか?いい具合に絞まりますよ」

そう言って綺礼は俯いて咽び泣いていたギルガメッシュの髪を乱暴に掴み、顔をあげさせる。いつも高慢な態度だった英雄王の姿に、時臣は思わず生唾を飲み込んだ。

夜はまだ明けない。


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「時臣+綺礼→ギルガメッシュで裏」でした。リクエストありがとうございました!


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