深夜、時臣と今後の聖杯戦争について戦略を練っていた綺礼は遅くなった帰宅に溜め息を漏らしガチャリと自室のドアを開けると、降り注ぐキラキラと眩しい王気が目に痛く、思わずドアを閉めて部屋を確認するが間違いなくそこは言峰綺礼に割り当てられた部屋であった。

「おいおい、なぜすぐ部屋に入って来ぬのだ」
「また来たのか」
「この我が直々に来てやったのに何だその言い草は。光栄に思えよ」
「サーヴァント風情が何を言う」
「…なんだと?」

バチバチと視線の先で火花が散る。薄暗く照らされた照明の下、ギルガメッシュの顔色が悪いのに綺礼は気づいた。心なしか青ざめているように思う。

「どうした英雄王。顔が悪いが」
「喧嘩を売っているのだな、いいぞ受けてやろう」
「―失礼、言葉を間違えてしまった。顔色が悪いが何かあったのか?」

綺礼の言葉にピシリと英雄王は硬直した。そこで綺礼は、いつもなら酒蔵を漁って勝手に人のワインを飲んでいる彼が、今日は一杯も飲んでいないのを疑問に思った。

「べ、別に時臣の娘に一緒に映画というものを見てくれと頼まれたので偉大なる我は承諾してやり見てやったのだがその時見た映画の恐怖がまだ抜けないとかそんなわけではないからな!」

ノンブレスで説明した英雄王はハアハアと肩で息をしたあと、ソファに座り直して目の前に立っている綺礼を上目遣いで見ながら言い放った。

「綺礼よ、一人身に冬の寒い夜は厳しかろうて。我と一緒に眠ることを許可するぞ」
「だが断る」

キッパリと断ると綺礼はベッドへと向かう。そのあとを追いかけながらギルガメッシュはあわあわと口を動かした。

「な、なぜだ!この我と寝れるのだぞ!?」
「ホラー映画を見て眠れなくなるのは幼子のようだな」
「ほらーだとは知らなかったのだ!綺礼、聞いているのか綺礼!!」

喚くギルガメッシュの腕を掴み、引き寄せる。その行為に「え、」と声を漏らした英雄王は、次の瞬間ベッドに叩きつけられていた。

「〜〜〜ッ」
「ほら早く詰めてくれ。生憎だがこのベッドは狭くて硬いのでな、英雄王には不満しかないだろうが嫌なら床で寝ろ」
「しかたない、これで我慢してやろう」

パサリと毛布を被せてやり、ポンポンと一定のリズムで軽く背中を叩いてやる。こうすることで寝つきがよくなると本で読んだことがあるのだ。

「きれー、ねむい」
「そうか。眠るといい」
「うむ…」

スースーと聞こえた寝息にギルガメッシュが眠ったことを理解した綺礼はサーヴァントにしては頼りない痩身を抱き込んだ。

(ふむ、確かに暖かいな)

人肌の温もりにうとうとと睡魔がやってくる。翌日、目が覚めたギルガメッシュが悲鳴をあげたことを綺礼は知らない。


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「言ギルで甘いのから辛いのまで何でも」でした。リクエストありがとうございました!


title:うきわ


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