▼Permanently

「勝呂の明日、俺にちょうだい」
 
 
塾が終わり一段落ついた放課後燐はそう言い残して教室を出た。
 
 
「何やアイツ…いきなし」
 
「坊、良かったやないですか」
 
 
もう予定埋まりはったんですね志摩は横で嬉しそうに呟いた。
 
 
「明日…て、何かあったか?」
 
「え!まさか覚えとらんとか?!」
 
 
信じられないといった顔で見返されては思い出そうにも思い出せない。
 
 
「まあ…
 明日奥村くんに詳しく聞いたら
 ええんとちゃいます?」
 
「おん…そうするわ」
 
 
その後はいつも通り寮に帰宅し課題を済ませば自然と就寝の時間になっていた。
 
燐の言っていた言葉が頭をよぎるもカレンダーに目をやれば二十日の枠は白紙のまま。
 
 
「…ほんまに思い出せん」
 
 
投げやりに携帯を放り出せば突如其れは鳴り響く。
 
 
「ん?…奥村からや」
 
 
[明日12時に俺んとこな!
 おやすみ!]
 
 
ただのメールでもこんなに喜べる自分は酷く単純に思えた。
 
 
「明日…か、」
 
 
期待を胸に寝転がればすぐに眠りにつくことができた。
 
 
 
 
 
「…ぅえっ?!勝呂?」
 
「すまん…大分早う来てしもうた」
 
 
できなかった、眠ることなど。
 
楽しみにすればする程頭は冴え気が付けば朝日が街を照らしていた。
 
 
(俺は遠足が楽しみすぎて
 寝れんかった餓鬼かいな…)
 
 
「ごめん!まだ支度できてねぇ…」
 
「支度?何のや?」
 
「え?何のって…
 勝呂、今日誕生日だろ?」
 
 
誕生日、燐の口から零れた単語が引っかかっていた何かを消化させる。
 
 
「そうか…
 今日、誕生日やったんか!!」
 
「忘れてたのかよおい!!」
 
 
見事なボケとツッコミはさて置き食堂の机には無数の料理が広げられていた。
 
 
「これ…全部奥村が作ったんか?」
 
「おう!いっぱい食えよ!」
 
 
料理の腕前だけは無敵な燐は自慢げに胸を張る。
 
休む間もなく冷蔵庫に駆け込みメインディッシュとなる料理を勝呂に手渡す。
 
 
「じゃーん!
 俺様特製ジャンボケーキ!」
 
「でっっか!!」
 
 
三段階積み重なったスポンジには隅々まで生クリームが塗られ沢山の苺、中心には『誕生日おめでとう』の文字。
 
 
「何か作ってたらつい楽しくなって
 三段になっ…た、って、うお!」
 
「ありがとうな奥村…
 ほんまありがとう」
 
「す、すぐろ?」
 
 
衝動から抱き締めた燐は驚きを隠しきれず勝呂の胸に埋まるしかなかった。
 
 
「来年も作ってくれるか?」
 
「へっ?」
 
 
初めての勝呂からのお願いに燐が否定する理由も無く。
 
 
「勝呂がいいなら」
 
 
笑顔で返す恋人に触れるだけのキスを贈る。
 
 
「…ん、ふ、すぐろ、」
 
「ん?なんや…」
 
 
燐の様子を伺えばちゅ、というリップ音と共に勝呂の額から唇が離れる。
 
 
「誕生日おめでとう、竜士」
 
「奥村…おまっ」
 
「だいすきだからっ…」
 
 
何時までも、何処までも、願う想いは『二人の幸せ』
 
>Happiness following permanence.
(永久に続く幸せを) End
 
 
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 勝呂HappyBirthday!!!
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