▼Red
イチゴ、レモン、マスカット。マンゴー、バナナ、パイナップル。
「ほわぁ〜、きれい!」
オレンジ、リンゴ、メロン。果物を主として販売している屋台に足を止める。
「ねぇねぇアルバさん!きてきて!
いーっぱいあるよ!」
服を引っ張る力にバランスを崩すも間抜けな面でついて行く。
ただの旅仲間もここまでくると本当の兄と妹みたいだ。
「お嬢ちゃんフルーツが好きかい?
ちょっと手を出してごらん」
「なあにー?」
気前のいい店主は慣れた手つきでナイフを操り、紅く熟したものをルキの小さな掌にそっとのせた。
「それはなぁ、スイカと言って
ちょうど今の時期によく出回る
フルーツなんだよ」
「わー!まっか!
すごいきれい!!」
はしゃぐルキは瞳に焼き付けんばかりにじぃっと見つめ、ほぁーだかふぇーだかよくわからない言葉を発している。
「ほれ、お兄さんらもどうぞ」
ありがとうございます、そう言って受け取ったスイカは水々しく確かに美味しそうだった。
ふと、ロスが隣に目を向けるとアルバもルキのようにスイカをただじっと見つめていた。
「食べないんですか、勇者さん」
「なんか…もったいなくて」
声に反応したアルバは少し刹那そうにはにかんだ。
「なんか戦士の目の色と同じで
食べちゃうのもったいないよ」
「…!」
パコッ、という音と共にあいてっという声が聞こえた。
「何言ってんですか勇者さん
変態ですか」
「変態じゃないよ!
ただきれいだからもったいない
って言っただけだよ!」
「お巡りさーん」
「なんでだよっ!!」
藻掻くアルバを片手で抑え、見えないように顔を背けた。
クソ、こんな褒め言葉初めてだ。
>The eye which became ripe red.
(紅く熟れた瞳) End
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