お前の事、最初から好きにならなければ、もっと楽だったかな?窓の外ではらはらと堕ちる紅葉に、小さく呟いた。
お前、百目鬼と出会った時になんとなくわかったんだ。百目鬼が友達として大切な存在になるという事が。その思い通り、俺たちは昔から知っていたかのように仲良くなった。
百目鬼に「親友だ」なんて言われて、すっごく嬉しかったけど、でも俺は親友になりたかったわけではなかったのだと、その時初めて気が付いた。俺の予想は半分当たって半分外れたのだ。
邪な感情を、親友だと言ってくれた百目鬼に向けていることに耐えきれなくなって、百目鬼を避けはじめたのは1ヶ月前から。
避けることは簡単だった。いつも俺から会いにいっていたのだから、当然なのだが。
それでもたまに見かける百目鬼は相変わらず仏頂面で、俺なんていなくても変わらないんだな、なんて考えてみたりする。
今だって、紅葉が舞う中庭で百目鬼は仲良くなった四月一日と話をしている。
あれは話というか、四月一日が一人で叫んでるだけか、と小さく笑った。
「柚流くん?」
中庭を眺めていた俺は、かけられた声に今お喋りしていたことを思いだした。
心配そうに俺を見つめる前席に座っている女の子に、にこりと笑って誤魔化した。
「…ああ、百目鬼くん」
彼女は俺の笑みだど気にも止めず、俺の見ていた中庭を見下げる。
「最近一緒じゃないけど、どうかしたの?」
俺はふいと空を見上げ「女の子って確信をつくの上手いよねー」と思わず口にした。