紅葉の広がる道を歩きながら、何となく見上げれば、親友だと思っていた君が笑っていた。
俺は、柚流の間延びした口調の心地良い声に耳を傾け、ゆっくりと時が流れていくのを楽しむ事が好きだった。
だが、いつからだろう。柚流の声が聞こえなくなったのは。いつの間にか、柚流は俺を避け始めた。
今だって、窓側でクラスメートと仲良さげに話している柚流と一瞬も目が合わない。ついこの前までだったら、どんなに遠くても柚流は俺に気付いて、笑顔を向けてくれた。何故だかその事実が認めたくなくて、目をそらし、歩みを速めた。
柚流は、俺が嫌いになったのか。柄にもなくそんな事を考えた。誰に嫌われても、例えば隣にいる四月一日に嫌われたって、どうとも思わない筈なのだ。
なのにどうして、柚流の事を考えて、柚流の声を懐かしみ、柚流の笑顔を求めるんだ?
親友だからか?
いや、違う。違うんだ。
「そうか…」
やっと分かった。
ピタリ、と足を止めると隣で歩いていた四月一日が「どうかしたのか」と首を傾げた。