short | ナノ
変なスイッチ押しちゃった



何だかやる気がでなくてサボろうと思って屋上に行ったのが失敗だった。女子生徒の首筋に顔を埋めてる男子生徒を見てしまったのだナンテコト。それに加えてガッツリ目が合ってしまったとか本気で恥ずかしくて消えたい気分だ。見てしまった。何てものを見てしまったのだろうか。私のバカアホドジ間抜け。頭が悪いのにサボろうとするからこうなるんだよ。これは反省しろって事だな、うん。お母さんが神様は何時も見てるって言うの本当だったんだ疑ってごめんなさい。懺悔を繰り返しながら、せめて女子生徒には気付かれないように気配を押し殺して静かに扉を閉めて帰ってきた。いや、それにしても何してたんでしょうね。知りたくもないけど。



「あ、帰ってきた。おかえりー」
「てか、サボるって意気込んでなかった?」
「え?あー、うん…何か神様が怖いから止めた」
「神様?何言ってんのよ、あんた。いるわけないでしょ」
「いやいや、いるってー。バチが現に当たってるし」
「はいはい、さっさと座れば?」



凄く投げやりに言われたので大人しく席へと着いた。昼休みが終わるまで残り少し。鞄に入れてあったお菓子を取りだし、封を開けたところでクラスの入口が騒がしくなった。騒ぎより食い気だ。極細ポッキーなるものをモサモサと食べつつ、友人Aを餌付けていくと友人Bからの謂われもない攻撃。えっちょ、なに痛いっ!脇腹への肘鉄だったために涙目で睨んだら入口の方を指差しながら私を見ていた。自然とそちらへと視線を向ければ、先程の男子生徒。間違いない、さっきも帽子を被っていた。まさか先程の邪魔に対する文句でも言いに来たのだろうか。



「あわわわわわっ」
「落ち着け。何したわけ?あの有名な逆巻ライトじゃない!」
「有名…?あ、ああ!あの変態行為で停学になったって言う…」
「そう。それで唯…呼ばれてる」
「嘘だろ嘘って言ってお願いします美海様女神様神様仏様」
「…諦めろ。もう本人が来ちゃってるから」
「へ……っ?」



恐る恐る顔を上げると満面の笑みを浮かべている逆巻くんが私を見下ろしていた。ヒィイ!咄嗟に目を逸らして友人Bこと美海様を見たところ即行で目を逸らされた。このっ裏切り者!宿題忘れた時に写させてあげた恩を忘れたのか!?もう見せてやんないだからね!そう心中で騒いでいたら、ぐりっと物凄い力で顔を正面へと向かせさせられた。痛い痛いっ首から有り得ない音がした!離して離して首が可笑しくなる!あ、この人いま笑った。私が痛さに悶えてるの見て、んふっとか言ったよ悪魔だぞこいつ!



「な、何でしょうか…」
「んふっ、ビッチちゃん凄く嫌そうな顔してるねえ。かーわいっ」
「嫌そうな顔してる人間に可愛いって言うのか普通…頭オカシイ人だよ」
「なーんか言ったかなあ?」
「いったたっ!!何も言ってません用件は何ですか!」
「まったく連れない子だなー。知らぬ仲じゃないのに」
「誤解を招くようなこといわっ痛い痛いっ何かすいません!」



何だこいつ嫌がらせしにきたのか喧嘩なら買うぞコラ!…嘘ですごめんなさい首から手を離してください土下座でも何でもするんで。あまりの痛さに涙目になりつつある私を無理やり立たせた逆巻くんは、そのまま何処かへと歩いていく。まさか裏庭でリンチですか!?必死に友人達に助けを求めたが、殆どが何故か目をハートにさせて彼を見ていた。可笑しいだろ何で羨ましそうなの!?私の惨劇を見てた!?ズルズルと半ば引き摺られてきたのは何故か保健室。ナンッテコッターイ保険医何でいなの。お前らの仕事は保健室で生徒が来るの待ってることだろーが。



「さ、逆巻くん…?」
「なぁに?」
「あのっ、何してらっしゃるんでしょうか…」
「何してるって、ビッチちゃんをベッドに押し倒してるんだよ?意外と君の苦痛に歪んだ顔がイイから興奮しちゃってさ。それより、そんな事を聞くなんて自分が今からされる恥ずかしいことを一から全部説明して欲しいのかな?」
「…え、あ、はい……?ちょっと話が分かんない…それとさっきの件で怒って文句を言いに来たんじゃ……」
「んふっ、別に怒ってないよ?ただ…ちょーっと話されたりしたら面倒くさいからさ。また停学になると僕もヤバイし」
「口止めしに来なくても言わないので解放して下さい。それに見られたらヤバイのは今もじゃないですか退きましょうそうしましょう」
「別に見られても僕は平気だよ。寧ろその方が燃えるし」
「え?でも屋上のは見られたらヤバイって……同じじゃないですか」
「あっれー?君、見たんだよね?何か会話が微妙に噛み合ってない気がするんだけど」



こっちが聞きてえよ、それ。何なのこの人本当に何なの。何時の間にかベッドに押し倒されるわで怖いよ今すぐお帰り願いたいんだけど。と言うか重たい。いったい何時まで私のお腹の上に乗ってるのかなー?重たいよ幾ら細身でも男の子だから重たいの。早く退いてください。何かを考えてる様子なので、このまま抜け出せないかと動いてみたが見事に太股で私の脇腹を挟んで逃がさなかった。何て足の力をしてるのかしら、この人。



「逆巻くーん?お願いだから離してください。何かよく分からないけどお互い何か食い違ってるみたいだし?もうなかったことにしません?」
「あ、もしかして君には僕と彼女があーんなことしてる様に見えたのかな?そしたらビッチちゃんってば、とんでもない変態だよねえ」
「え?いや、あの…?自己完結してるみたいですけど、さっぱり分かんないんで説明下さい」
「んふっ、バカなコは嫌いじゃないよ?」
「お願いだから会話をしませんか!?そしてこの手は何!?」



スッキリとした表情を浮かべたかと思えば、何やら制服へと侵入してくる手。それが肌を滑っていく感覚が気持ち悪く、慌てて手を掴んだ。けれど、それでも止まらない。可笑しい可笑しいぞ、どんな力してるのさ!抵抗が煩わしかったのか、目にも止まらぬ速さで直後に手は頭上でまとめあげられていた。そして、これもまた信じられない力でベッドのシーツへと縫い付けられている。いやいやヤバイよ、これ。マジで洒落になんないって。首筋を舐めあげられ、Yシャツのボタンへと手が伸ばされる。小さく震えた私を見て、また逆巻くんは特有の笑い声を漏らした。ボタンが外されるのを視界に納めた後に目をギュッと瞑って腹筋に力をこめる。瞼の奥で星が舞った。



「いったぁ…」
「ううっ…石頭め…」



自分から頭突きをしたものの案外と彼の方が石頭だった。自由になった手で頭を撫でていると再び交わる視線。はっ!こんな所で頭を押さえてる場合じゃない!お兄ちゃん直伝黄金の右ストレートを逆巻くんの鳩尾に決め、そのまま脱兎の如く保健室から逃げ出した。私は悪くないぞ悪いのは逆巻くんだ!真っ白な髪色の生徒とすれ違いながら教室へと走った。先生っ私は無事に帰還したよ!そう言ったら思い切り教科書で叩かれた。後日、この事を後悔するとは知らずに痛む頭を撫でていた。



ビッチちゃーん。ねえねえ、僕ってばSでもMでもイケるんだけどさあ。
はっ!何しに来たこの変態セクハラの逆巻くん!
僕にとって変態は誉め言葉だよ。んふっ、君ってば泣き顔とかもそそるけど…あの暴力もイイかなー?って思っちゃったんだ。責任とってくれるよねえ?
あれは…って違う!暴力振ってない誤解だよ皆!責任とらないよ!?あうっ石なげないで!このっ、逆巻くんのせいだ!

←|→


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -