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すいーとはにー



何処からともなく甘い香りが漂うマンション内。そして外では何だかそわそわした人々。今日は二月十四日、そう世間で言うバレンタイン。

通称、妖館と呼ばれる其処では一人の少女が憂鬱そうに椅子に座って細く白い足をぶらつかせていた。



『ああ、今年もこの日がやって来た。バレンタインなんて嫌いなチョコレート共々この世から消えてくれることを僕は切に願う。いっそうリア充とともに爆滅してしまえ。第一、そんなものを送ることが僕には理解出来ない』
「そう言っているわりには随分と立派なガトーショコラを作ったな」



双子の妹である凛々蝶の指摘に机の上に置かれているそれへ視線を向けた。その机の上には他にも様々なチョコレート菓子が置かれており、反論の余地は皆無。悔しいので彼女の持っている綺麗にラッピングされた箱を見ていると照れたように、それを後ろへと隠した。

凛々蝶には最近、恋人が出来た。SSの御狐神双熾だ。彼のために一緒懸命に作っていた彼女は何とも嬉しそうだった。一方、僕は別に暇だから作ったわけで大意はない。だが、嫌いなチョコレートを食べるつもりはないので此処の住人に渡そうとラッピングを済ませていた。



「準備は出来たぞ、唯」
『では、行こうか』

「おはようございます、凛々蝶様、唯様。今日も素晴らしくおき――」



玄関を開けて一秒ほどで僕は扉を閉めてしまった。だって何時も以上にきらきらして尻尾を振っているように見える彼が居たから。正直、怖かった。凛々蝶が相手しているうちに横を通り過ぎていく。背後からは何やら保管するとか食べろという単語が聞こえてきたが、聞こえないふりをしてラウンジまで向かう。途中に会った面々にチョコレート菓子を渡していく。



『おはようございます。暇潰しに作ったものだが、どうぞ』
「おー、ありがとな」
「嬉しいわ。そして今日の服装もメニアック!」
『黙ってもらおうか、変態。その、ところで……ざ、残夏は何処に……』
「はぁい、僕のこと呼んだ〜?」



突然、背後から抱き締められ、驚きで肩が大きく揺れた。人の心臓に悪いことをした張本人は何時ものように笑みを浮かべており、謝る気のない声で謝罪の言葉を口にする。取り敢えず離れてくれ、心臓の不整脈が酷いから!



「それで、どうしたのかなっ?」
『えと、あの……君に…』
「ボクに〜〜?」
『ちょ、チョコレートを……好きなのを、選んでくれ…』



沢山の種類の菓子が入った紙袋を渡し、其処から選ぶようにと言えば、どうしてだか首を傾げ始める。そして不意に顔をずいっと近付けてきた。



「何で選ぶの?全部は…ダメ?」
『ぜ、全部だと…!?どれだけあると思っているんだ。全て君のために作ったとはい……』



其処まで言って、しまったとばかりに自分の口を押さえた。だけれど殆ど言ってしまったも同然。そのためな残夏はにまにまと笑いながら更に顔を近付けてくる。もう恥ずかしくて穴があったら入ってしまいたい。



「じゃあ問題ないよね〜。唯たんがボクのために嫌いなチョコレート菓子作ってくれたわけだし」
『別に暇だから作っただけだ…』
「相変わらず素直じゃないねぇ。そんな唯たんも大好きだけど」



そう囁くとともに残夏の唇と私のそれとが重なる。本日最大の不意打ちに顔が真っ赤になってしまったのは言うまでもない。心臓も、どきどきと煩く騒ぎ立てる。



『…残夏、今のは…不意打ち過ぎる……』
「あはー、ごめんね〜。じゃあ、キスするよー」
『ま、まて、んぅ……』



有無を言わせずに塞がれた唇。すぐに離れていくのに淋しさを感じたが、再びそれは重ねられた。








「ラブラブなところ悪いけど…此処ラウンジ」
『(恥ずかしくて死にたい…!!)』


―――――――
初のいぬ×ぼく
前から好きだったけどアニメが始まってから更に
口調があってるか不安

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