脱出ゲーム | ナノ
これは果たして夢か



目が覚めたら訳の分からない場所にいた。どうやら洋館の大広間と言ったところか。むくりと体を起き上がらせ、辺りを見渡すとカラフルな頭の奴ら含め他多数が気を失っているのが見える。その中に顔見知りの奴なんて一人たりともいない。さて、どうしたものか。下手に動かない方が良いような気がしたけれど、鞄を引っ掛けて広間の外に出てしまう。さあ、帰るぞ。今日は仁王にパフェを奢らせる予定なんだ。こんな変な所にいて時間を食われて堪るか。



「う、ぁあ…」
「何だよ、汚い声し…」
「あ、あああ」



え、何これ。何なのこれ。皮膚がドロドロのゾンビみたいなのが手を伸ばしてきてるんですけど!しかも二体も!!何なのこれ!?何なの!?プチパニックを起こしてるうちにどんどんと距離が近付いてくる。うん、これはアレだ、うん。逃げるが勝ちってな!先程までいた広間に戻るために全力疾走をする。そしたら通った時はいなかった場所にゾンビがいた。うわぁあああ待って待ってタンマ!マジでタンマ!



「退けよ気持ち悪いんだよぉ!!」



あら、蹴っちゃった。これ靴、大丈夫?大丈夫なのかなー?一人でぎゃあぎゃあ言いながら駆けて戻り、後ろ手で思い切り扉を閉めた。そしたら私が出ていった後に目が覚めたらしい数人からの視線が突き刺さる。そして、大きな音に目が覚めたのが数人。どうやら、起きていない奴らを片っ端から起こしていたらしい。そしたら、こいつら顔見知り同士なのか?制服が同じなのもいるし。取り敢えず…外怖ぇ!!何なの!?マジで何なの!?汚いし、気持ち悪いし!アレをどうしろと!?あと此処は何処なの!おいおい、夢かこれ夢なのか!?だったら早く覚めてパフェ食べさせろよ。それによー、凄く視線が痛いわ。私の硝子ハートにヒビ入りそうなんだけど?まあ、入らないけど。ついでに何か見たことあるようなないような…あー、何処で見たんだろ。



「あー、ちょっと良いか?」
「良いけど、何?」
「此処は何処なんだ?」
「いや、知らないし。此方が聞きたいわ」



むっちゃデカイ奴に声を掛けられた上に私が聞きたいことを聞いてきた。そうだよ、本当に聞きたいよ!私のパフェがなくなったら、どーすんの!…あれ、待ってよ。この人が知らない=皆が知らないってことか?いやいや、待て待て。冗談がキツすぎ。じゃあ、何でこんなところにいんのさ。あーでもこーでもないって考えてたら、ガングロが近付いてきた。うおっ、ジャッカルにも負けてねーな、おい。どうやったら、そこまで焼けるの?ねえ?つか、ヤンキーですね。



「テメェ、本当に知らねぇのかよ。今、外から来やがったじゃねえか」
「私、この中で最初に目が覚めたんだよね。帰ろうと思ったけど無理だったから帰ってきただけだし。何なら外に出てみれば?」



それで泣きを見れば良いと思う。初対面の人間にガン飛ばしてる野郎なんざな!それ見て笑ってやるわ、あははっ!想像しただけで愉快だわ。それにしても何処かで見たような気が、やっぱりする。えーっと、何だっけ?何とかのバスケ?そうそう、そんなのにカラフルズが出てたわ!…って、おい!何で漫画の登場人物がいるのかな!?本気で夢か、これ!!ガングロの顔をガン見したまま固まれば、奴は少しばかり後ずさりやがった。つまり、引いたってか?だが、そんなことを気にしている余裕なんてない。



「ちょいちょい、そこのガングロ」
「あ?誰がガングロだ!」
「軽く殴ってくれない?これは夢だと思うんだけどさぁ」



そう言えば、何の躊躇いもなく殴りやがった。真田に比べればマシだけどな!彼奴は真面目に可笑しいもん。外皮硬化させてんのかってぐらい痛いし。…オッケーオッケー、ちょう痛い。つまりは現実なんですね!だとすると名前は忘れたけど、なのだよがいるはず。アレが友達から聞いてて一番ウケたし。…いやぁ、本当にどうしよう、これ。現実逃避をしていると何か黄色いのが寄ってきた。



「あ、青峰っち…その子の頭、大丈夫なんスか?」
「手遅れだろ、わいてやがる」
「わいてねーよ、ガングロ」
「てめっ、蹴んな!」
「あ、そういやさっき何か汚いもの触ったから拭いとかないとー」
「ああ!?」



ぷっ、青筋立ってやがる。本当に汚かったからなぁ。デロッデロッだからねー。取っ組み合いに発展しかけたところで先程のデカイ奴が仲裁に入ってきた。取り敢えず、話がしたいらしい。話したって此処が何処だか分からないでしょーが。それでも、自分だけじゃどうにもならないのも事実なのでポケットに突っ込んであった棒つきの飴を食べながら、そちらへと向かう。睨まれたけど知らねっ。キョーミないし、なのだよ以外。アレを生で聞いて堪えられるかな、私の腹筋。ズラーッと並んだ野郎共を見て一言。キッモイぐらいにイケメン多いな爆発しろ。



「…取り敢えず、君が一番最初に目が覚めたってことで良いのかい?」
「うわっ、赤。んー、起きてるの私だけだったし、そうなるね。んで、えーっと……キテレツの世代の人?」
「ぶほっ!!キテレツの世代ってキしかあってないじゃん!」
「あ、そーなん?友達が話してるの聞いただけだし、なのだよ意外はうろ覚えだわ」



何か一人が爆笑し始めて何人かが肩を震わせている。いや、でもキテレツの世代でも良くない?頭の色とかキテレツすぎるっしょ。あ、あのガングロもそうか。いよいよ、あってんじゃね?ガリガリ飴をかじりながら、なのだよについて触れれば、緑色の頭の奴に視線が集中する。そいつは、居心地が悪そうに眼鏡のブリッジを押し上げた。



「…何なのだよ」
「マジだ。マジでなのだよって言った!…やばっ、ウケる!」
「ウケないのだよ!赤司、この女をどうにかするのだよ!!」



赤い絨毯ごと床を叩いて爆笑すれば、なのだよは大噴火。マジで笑える!黒髪の奴がまた笑い始めて、いよいよお腹が痛くなってくる。そんな私に周りはどうすればいいのやらと言った感じだ。ス、スンマセン。けど、止まらない。笑いすぎて息切れを起こした辺りで漸くと笑いの波は収まってきた。



「ところで、あんた誰なんだ?」
「立海大付属高校三年の篠宮紗綺」



眉毛が凄くて赤髪の大きな奴の問いに答えれば、何人もが首を捻った。そりゃそうだわ。私たちの学校があるわけないもん。




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