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廃病院でホラー



目が覚めると廃病院らしき所だった。埃っぽいベッドの上で目が覚めたなまえは、苛立たしげに其処から降りると服についた埃を払ってしまう。何なんだこの状況は。普通に部活をしてたはずなのに制服に変わっていたりと意味が分からない。近くに置かれていた生命維持装置の電源ボタンのスイッチを押してみる。電源が入ったことから、どうやら此処は電気が通っているようだ。次に携帯を取りだし、電波を確認してみたが此方は圏外と表示される。粗方、病室内を調べた彼女は廊下へと出た。薄暗いが何とか視界を確保できるぐらいの光源はあるようだ。それが電気の明かりでないことには何も触れまい。



「さてっと……どうしようかな。と言うか私を此処に連れてきた奴をぶっ殺す。キセキどもだったら彼奴らを地獄に送ってやる。くそっムカつく腹が立つ」



舌打ちを漏らしながら一気に言葉を吐き出すとなまえは病院内を歩き始めた。それから五分。彼女の目の前には可笑しな展開が広がっていた。血塗れのゾンビが此方へと手を伸ばして来ているのだ。それも五体も。流石のなまえもこれには面食らったように後ずさった。何なんだ此処は。こんな非科学的な事があるだろうか。これを夢だと判じて逃避できるほど単純な頭を持っていれば良かったのかもしれないと彼女は思いつつ、ダッシュでその場を逃げ出した。逃げる途中に壁に貼り付けてあった見取り図を無理やり剥がし、逃げ道を模索する。このまま進めば行き止まりになることに気が付き、次の角を曲がってしまう。段々と息切れを感じ始めたなまえは慌ててナースステーションへと逃げ込んだ。其処には同じようなゾンビがおり、ナース服を着ている。足首を掴まれ、転びそうになるのを何とか堪えると近くにあった椅子で思い切りゾンビを殴り付けた。



「うっあ、ぐぁ……」
「気持ち悪いんですよクソゾンビが!人の足に触るなんてふざけた真似してんじゃねえですよ。マジ死ね失せろ。と言うかゾンビの分際で鉄パイプ持ってるってどういうことだよ。殺すつもりだったわけですか?そんなら殺られる前に殺ってあげましょうか」



酷く苛立たしげに舌を打ちながら鉄パイプを手にするとそのままナースステーションを後にする。一番最初に出会したゾンビもまた鉄パイプで片付けてしまい、廃病院内を探索していく。それでも脱出の手懸かりが見付からないでいた折りに奥の病室の扉が開かれる。またゾンビかと笑顔で鉄パイプを振り上げたところで相手からのストップとの悲鳴にも近い声が聞こえてきた。



「え?…ああ、何だ黄瀬か。ゾンビかと思ったよ。あははっ、危ない危ない」
「止めなきゃ絶対殴ってたっスよね!?しかも鉄パイプ何処で入手したんスか!?」
「おい、うるせぇぞ黄瀬」
「青峰っち!なまえっちがいたんスよ!しかも、これで俺のこと殴ろうとしたんスよ!?」
「峰くんもいるの?もしかして他に誰かいたりする?」
「うおっ、その鉄パイプ血が付いてんじゃねえかよ……。赤司の奴等が上の階にいるぜ」
「あー、じゃあ二人は探索に出されたのか。…見るからに頭が働かないバカ二人なのに。ああ、もしかして何があっても大丈夫そうなのを選択したのか。図体でかくて頑丈そうなのを」
「おい、聞こえてんぞ」



至極真面目な顔で言うなまえは悪びれる様子もなく、聞こえちゃった?と小さく首を傾げた。それに呆れつつも一度、赤司たちと合流することが提案される。それに大人しく頷き、二人の後を追い掛けながら階段を昇りきってしまう。そこでまたもやゾンビとの遭遇。黄瀬があげた悲鳴に煩そうに顔を顰めながら鉄パイプを握り直した彼女は何の躊躇もなくそれで攻撃を加える。



「なまえっち!マジで男前!もう一生着いていくっス!」
「嫌ですうざいです離れろ駄犬。さっさと案内しやがれです」
「つーか、それ視界の端にちらつかせんな。今のお前、赤司よりこえーわ」
「何を言ってるんですか?峰くん、私より赤司の方が怖いですよね?ん?」
「はい、すいませんそうです」



赤司たちがいる病室は何故かゾンビが寄ってこない安全地帯なのだと言う話を聞きながら其処へと辿り着いた。此処に来るまでの道すがらゾンビを倒すこと七体。まさになまえは無敵状態。病室に入れば驚いたような表情をされたかと思えば、桃井が泣きながら駆け寄ってきた。それを受け止め、なまえは彼女の頭を撫でた。一見、感動的な再会であったが、他は微かに引いていた。その血が付着した鉄パイプを目にして。



「怖かったよ…でも、なまえちゃんが無事で良かった……」
「さっちゃんこそ怪我がなくて良かった。大丈夫だよ、そんな泣かないで」
「お取り込み中悪いんだけど…なまえちゃーん?え、なにその危険物」
「あ、これ?ゾンビが持ってたから有り難く拝借してやり返してきたの」
「ゾンビより恐ろしいわお前!」
「それより無事で何よりだ。その紙は見取り図か?」
「ああ、そうそう。二階の案内図だよ。逃げてる途中に見つけたの」
「それで二人は何見付けてきたのー?」
「…あー、何っつーか…」
「何もないのか。まったく使えないのだよ」
「なら緑間っちが行けば良いじゃないっスか!大体こんなのジャンケンで決めるのが悪いんスよ!!」
「煩いです、黄瀬君」



黒子によるイグナイトで撃沈した黄瀬を視界に収めつつ、ジャンケンで決めたのかと呆れたような視線を赤司へと向けた。等の本人は気にしていないらしく、二階の案内図へと意識は向いている。さて、これからはどうするのだろうか。色々と考えながらなまえはベッドへと腰掛けた。その隣にまだ涙が消えない桃井を座らせ、その背中を優しく撫でてやる。不意になまえが小さく声を漏らした。それに全員の視線が向けられる。



「どうかしたのか?」
「凄く気になったんだけどね、黒くんのミスディレってゾンビに効くのかなって」
「え……」
「彼奴ら一応目はあるしねー。どーなの、黒ちん」
「……何とも言えません。そもそもゾンビ相手に試したことなんてありませんから」
「じゃあ気になるから試しに行こうよ。ねっ?」
「すげぇ笑顔だぞ彼奴……」
「ちなみに同行者は火神で」
「はぁ!?おい、やめろ!俺を巻き込むな!」
「諦めるのだよ、お前たち。なまえは有言実行の人間だ。何が何でもやらせるつもりだぞ」
「ああ、そうだな。諦めて行け」



赤司の言葉に二人は脱力感に襲われながらなまえを振り返った。本人も行くつもりらしく鉄パイプを軽く振って準備運動をしている。彼奴とゾンビ、どっちが怖ェんだろうな。僕はなまえさんの方が怖いです。そんな会話をしながら火神と黒子は病室を後にした。





廃病院でホラー

あ、ゾンビいた。黒くん早く
死ぬなよ黒子!
こうなったら全力で火神君に視線誘導します
おい!それはマジで止めろ!





あとがき

リクエストありがとうございました、いちまる様。やっぱり嫌悪だと夢主の性格的にこうなっちゃいますね。最早普通のホラーではなくホラーゲーム的な内容に。最後に振り回される二人のその後をあたたかく見守ってやって下さい。

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