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届かない届く届かない



「劉さん、」
「何アルか」
「お願いです、その手を下げてください」



限界まで伸ばした手がプルプルと震えている。ついでに足元も爪先立ちだから覚束ない。私が落とした携帯を拾って下さったのは有り難いけれど、これじゃあ意味がない。上にあげられた携帯に手を伸ばす私を見て笑う劉さんは凄く意地悪だ。どんなに背伸びしたって届かないのは分かってるけれど、こればかりは仕方がないんだ。元々凄く身長差がありましたからね!



「劉さんってば!聞いてます!?」
「聞いてるアル。それにしても本当に小さいアルな。小学生並みアルよ」
「小学生…いや、それは有り得ないです!劉さんから見たら誰だってそう見えるだけであって私は平均身長です!」
「遠回しに福井さんをチビって言ってるアルか?」
「いや、誰もそんなこと言ってないですけど!?」



背後から福井さんの怒鳴り声がしたが無視させていただく。だって私は言ってないもの。劉さんから見れば誰だって小さく見えるって言っただけで…あれ、もしやこれってバスケ部にしては小さめな福井さんは小さく見えるって言ってるも同然だった…?色々とグルグル考えながらも一度、爪先立ちをやめて腕も降ろしてしまう。無理に伸ばした右腕を揉みほぐしながら恨みがましいとばかりに劉さんを見上げれば、彼は物凄く意地の悪い笑みを浮かべた。



「残念アルな。まったく届かなかったアル」
「ちょっとだけでも降ろして下さい。お願いです、劉さん」
「…仕方ないアル」
「そう言って何で更に上!?」



凄く凄く意地悪な劉さんだ!あたふたとしながら再び手を伸ばすものの先程よりも届かないのは明白なことであった。本当にどうしよう。うーうー唸りながら手を伸ばし続ける。ついでに劉さんの腕を下げようと下に引っ張ってみても、びくともしない。力の差が悲しい…。つま先立ちを止め、無言で劉さんの服をぐいぐいと引っ張る。せめてもの抵抗である。



「何アルか」
「劉さん…」



お願いです手を下げてください。そう無言で訴えていると急に体が浮く。突然の事に目を丸くさせながら後ろを見れば、氷室さんが微笑んでいる。そして彼の手によって、かの有名なライオンの子供のように持ち上げられている状況。え、どういうこと?



「これで届かない?」
「え?…あ!届きます!」
「氷室…」
「劉さん!?遠ざからないで下さい!」
「あー、逆効果だったかな?」
「逆効果、ですか…?」
「それより早く追い掛けないと」
「あ、そうだった!劉さん!待ってください!」



急いで追い掛け、何度目か分からない攻防戦を開始する。ぐいぐいと腕を引っ張って下げようと試みたり、ジャンプしたりと何度も同じことを繰り返す。だけど、結果は見えているわけだ。何でこんなに劉さんは意地悪なのでしょうか。





アトガキ

リクエストありがとうございました、ラン様。遅くなって申し訳ないです。意地悪な劉との事でしたので構って欲しいから返してあげないと言った感じに書かせて頂きました。劉を書くのは初めてでしたので偽者感が…。しかも短くて申し訳ないです。精進して参ります。

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