plan | ナノ
たとえ、それでも



どうしよう…何で私だけが…?気が付けば、病院のベッドの上に寝かされていた。そして、その隣には涙ぐむ両親の姿。最初は頭がついていかなかった。だって、廃校で何人もの人と一緒に脱出しようとしていたのに。それなのに、どうして私だけが此処にいるの?黙りこくる私をお母さんが泣きながら抱き締める。無事で良かった。その言葉にホッとしたけれど、他の皆さんが気にかかる。私と一緒で何処か別の病院にいるのだろうか。それから暫くして警察の人がやってきて愕然とした。



「発見されたのが私だけ、ですか…?」
「ええ。貴女と同じ日に行方不明になった学生が何人もいるのですが、見付かったのは貴女一人です。何か心当たりはありませんか?」
「……いえ」



あんな話をしても信じてもらえるはずがない。それより、どうして私だけが戻ってこれたの?何か特別な事があったわけでもない。ただ、化け物と襲われて皆さんとはぐれてしまって…。一人で体育館に戻ろうとしていたはずなのに。意味がわからなくて頭を抱え込む私の様子に警察の人は帰っていく。きっと、あの人達じゃどうにも出来ない。だから、私が何とかしないと…現状を分かってる私が此方から出来る方法で助けないと。でも、そうするにはどうしたらいい。必死に頭を働かせていると唐突に病室内の電気が落ちた。停電かと思ったが、外から騒ぐような声はしてこない。暗やみに怯えながらも外へと出ようとドアに手を掛けたが、それが開くことはない。



「何でっ…!」
《キャハハ、》
「子供の声…?ど、どこから…」
《助けたい?本当に助けたいの?》
「え…?」
《ホントは、そんなこと思ってないくせに。自分だけ帰ってきたのが気まずいから、そう思い込もうとしてるだけでしょー?》



合成音のような子供の声は、笑いながらそう言った。どういう意味…?それって私が本心じゃ考えてないと思ってるの?それより、この声の持ち主は私たちが置かれている状況を知ってる?不安と恐怖から、その声の主を必死に探すけれど何処にも姿は見当たらない。耳障りな笑い声は私の周りを囲むように聞こえてくる。やだっ怖い…。へたり込んで耳を塞いでも声は聞こえてくる。それどころか先程よりも大きくなっているようだ。



「だ、誰なの…!?」
《ねえ、本当に助けたい?》
「っ、そんなの当たり前だよ!」
《じゃあさ、チャンスあげるよ。今から君にね、時空を越える力を与えてあげる》
「時空を越える力…?」
《でも、普通に戻ったら面白くない。辿り着く場所はランダムだ。そして――》



顔も分からない相手が笑ったのが分かる。背筋が冷えた私に子供の声は無邪気にこう告げた。一つの時空を越える度に君の命を削ろう。言葉を失った私に子供の声は甲高い笑い声をあげる。



《やっぱり嫌なんだ?人間、誰だって自分の命の方が惜しいもんね。だったら助けなきゃ良いんだよ》
「…っ、それでも良いよ。私は皆さんに何度も助けてもらったから。それで助けられるなら良いよ」
《はぁ?命削るんだよ!?ランダムなんだから何度目で戻れるかも分からないのに!?》
「本音を言うと怖いよ…最初は分からないだろうけど段々と命を削られてることも実感するようになるかもしれない。けど、戻らないで後悔したまま一生を終えるのも同じくらい辛い。だから、私は皆さんを助けに行くの」



偽善者、後悔したって知らないよ。その声と同時に病室内の電気が再び点灯する。ドッと冷や汗が流れてきて、額の汗を病院着の袖で拭ってしまう。あの声が言っていたことが本当なら時空を越えられるはず…。怖いけど決めたんだ。準備しないと。立ち上がり、気合いを入れるように自らの両頬を叩いた。





アトガキ

リクエストありがとうございました、遥様。遅くなってしまって申し訳ないです。意外に難しくて短くなってしまいました…。夢主の命が削られるとの事でしたので、このようなお話にさせて頂きました。それにしても、この子供の声の主は少々ゲスいなと書いてて思いました。

←|→


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -