plan | ナノ
+1℃の恋愛微熱



「はぁ…寒い」



暖房のきいた図書室から廊下へと出て、その温度差に腕をさすりながら声が漏れた。うちの学校は校舎が古いから余計に寒い気がする。放課後と言うこともあり、あまり人の気配がしない校内を歩きながら自販機を求めて歩いていく。うー、それにしても寒いや。ちょっと飲み物買いに行くだけとか思って、この寒さを舐めてた。吐く息が白くなり、それがまた空気中に溶けて消えていくのを視界の端に捉えたまま歩き続けた。外に設置された自販機に辿り着き、悴んだ手でお金を入れていく。あたたかーいお茶のボタンを押そうとしたところで背後から衝撃を感じた。その反動で指は全く別のお汁粉を押してしまう。どっかのメガネの好物じゃないんだよ!私が用があるのは、あたたかーいお茶なの!こんな事になった犯人の顔を拝んでやりたかったものの、背中に広がる温かさについ気が抜けてしまう。



「なまえちゃん、あったかー」
「その声、和成…あんたのお陰であんたの相棒の好物が出てきたんだけど」
「ぶはっ、おしるこじゃん!ごめんごめん!責任持って飲むからさ!真ちゃんが!」
「結局そっちに回すんだ。…それにしても何でいるの?部活は?」
「休憩中!そんでジャンケンで負けたオレが温かい飲み物を買いに来たってワケ。それにしてもなまえちゃん、マジあったけぇ…」



人で暖を取る和成のジャージを引っ張ってやれば、何故か更に引っ付かれる。その逆で離れて欲しいんですけど。背中は暖かいが足など、その他もろもろ寒いので早く図書室へと帰りたい。それに人気の高いバスケ部のコレといるのを目撃されると非常に面倒くさい。人の噂は七十五日?そんなん乗り切る前に尾ひれ背鰭がついて取り返しのつかないことになってるから。



「寒いから暖房のきいた図書室に帰りたい。だから早く離して欲しいんだけど」
「そんな冷たいこと言うなってばー。この和成君が暖めてやるから!」
「遠慮します。暖房器具と言う素晴らしい文明機器が私を待ってるので」
「えー、オレもっとなまえちゃんと居たいんだけど。だから断りまーす!」



甘えたような声が聞こえてきたかと思えば、次には何時ものような声のトーンで言葉を発する。不覚にもほだされかけたが、それによって正常な思考を取り戻す。暖かい空間が私を待ってるから早く帰還しないと。そう思ったものの、器用に人の事を逃がさないように背後から抱き締めつつ、自販機にお金を入れて和成は飲み物を買っていく。どうやら意地でも離すつもりはないようだ。半ば諦めてきたところで温まった缶の飲み物を持たせてもらう。あー、これで幾分か暖かいわ。



「と言うか、自分の分を買い直してない!」
「これでしょ?ふふんっ、オレが先に買ってました!」
「あ、そうそれ!何で分かったの?」
「なまえちゃんのことは何でも分かってるんだよ」
「何それ。ストーカー発言?」
「何でそうなるの!?」



違いますーと語尾を伸ばしながら和成は私の背中に頭をぐりぐりと押し付けてくる。それが擽ったくて身を捩った。だけど、まだ離すつもりがないらしいので逃げないようにと腰回りを抱く腕に力が込められる。あー、それにしてもあったかい。寒かったけど、和成はあんがい体温が高いみたいだから段々とぬくぬくしてきた。



「なまえちゃんがすり寄ってくると、なつかない猫が甘えてきたみたいでむっちゃ可愛い!」
「んー、あったかいから」
「んじゃ、毎日抱き締めに行くわ!」
「いや、いらない」
「相変わらずツンデレなんだから、もう!そんなの真ちゃんだけで十分だっつーの。だから、もっと甘えてってば。そしたら、オレが凄く甘やかしてあげるから」
「どちらかと言うと、あんたが甘えてきてると思うんだけど」
「えー、そう?なまえちゃんが甘えてくれれば、変わるんだけど」
「っ!耳元で喋らないでよ!」
「顔真っ赤にしちゃって可愛い!」



急に耳元で低く囁かれれば、嫌でも顔に熱が集まってきてしまう。と言うか、人が耳が弱いって知ってるんじゃないでしょうね。知っててやってたら確信犯だよ、こいつ。耳を押さえたいのに飲み物を持ってるから無理だし。恥ずかしさから小さく唸る私に和成は、可愛いと言いながら耳朶を甘噛みしてくる。やっぱり、確信犯だった!



「和成っ!」
「あー、もう可愛い可愛い。離したくねぇわ」
「……和成、あんた前…」
「前?…げっ、真ちゃん!?しかも何か怒ってる!?」
「高尾、貴様…なかなか戻ってこないと思えば、何をしてるのだよ!」



た、助かった。緑間は、私から和成を引き剥がすと凄い剣幕で奴を睨み付けた。あ、そう言えば、こいつは部活の休憩中だって言ってたな。とばっちりを食らう前に赤くなった顔を隠して、その場から逃げ出した。





あとがき

リクエストありがとうございました、空さま。楽しんで頂けたでしょうか?あまり甘い話は書かないので時間が掛かってしまって、すみませんでした(><)糖分は当サイトにしては甘い、はず。

←|→


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -