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震えながら 怯えながら



ヤバイヤバイ。どうしよう、すごく気まずい…。校内探索に出たものの、化け物に追われて皆さんとはぐれてしまった結果として青峰くんと二人っきりとは…。あまり話したこともなければ、失礼な話として、その…不良っぽいと言うか何と言うか。何となく先入観で苦手意識を持ってしまってる彼とは、非常に気まずかった。本人は、どう思ってるかは知らないが少なくとも私は、そうだ。ズンズンと前を歩いていく青峰くんに置いていかれないように早足で廊下を進んでいく。



「おい」
「は、はい!」
「何ビビってんだよ。あんたの方が歳上だろうが」
「それは、そうですけど…」
「はぁ…まあ良い。取り敢えず歩くのが遅ェ」
「あ、すみません」



そりゃあね!先ず歩幅が違うもの。遠回しにチビと言われたような気分になるのは私の被害妄想だけどさ!早足で歩いていても遅いと言われてしまえば、小走りで歩くしかない。離れては小走りをし、また離れてはとの繰り返し。青峰くんは足を止める様子もないので頑張って追い掛けていれば、不意に物音がした。何かが落ちたような音。この近くに誰かがいるのか。はたまた、化け物か。血の気が引いていくのを自覚しながら歩いていれば、青峰くんの背中へとぶつかってしまう。若干、打ち付けた鼻が痛い。鼻の辺りを押さえつつ、青峰くんを見てみると彼は足を止めていた。かと思えば、急に今までよりも早足になっていく。それを慌てて走って追い掛けた。



「青峰くん?」
「早く帰んぞ」
「あ、はい。…えっと、何か顔色が悪いですよ…?」



あの強面青峰くんの顔色が悪かった。その理由として思い当たるのは、先程の物音だけ。いや、まさか…もしかして青峰くんって、こういう事が怖かったりする…?そう思いつつ、懸命に隣に並びながら顔色を伺っていると睨まれてしまった。ヒッ、やっぱり、そんなはずがないですよね!ごめんなさい勘違いなんで忘れてください!少しだけスピードダウンをし、元の定位置へと戻る。ああ、怖かった…。化け物とは別の恐怖に体を震わせていれば、二回目の物音が聞こえてくる。今度は、近い場所からだ。不安げに背後を振り向いた瞬間、通り過ぎてきた教室のドアが吹っ飛ぶ。其処から這い出るように化け物が姿を現した。一見すると髪の長い女のようなそれは、四つん這いで此方へと這ってくる。悲鳴が出そうになったが、それに被せるように別の悲鳴が耳朶をつく。この声は青峰くん…?仮定を確信へと変えようとしたところで前を向くより先に腹回りに腕が回される。そのまま私を小脇に抱えた青峰くんは物凄い勢いで廊下を走って逃げていく。体勢の問題で化け物と顔を合わせる形で段々と遠ざかっていくそれを見ているしかなかった。それにしても速い。化け物が追い付く暇もなかったよ。化け物を降りきってもなお走りつづける彼は、漸くと空き教室に逃げ込んだところで足を止めた。



「青峰くん?大丈夫ですか…?」
「………」
「…もしかして、やっぱり…ああ言うのは苦手だったり…?」
「…言うなよ!今吉さんには、ぜってえ今の事言うなよ!」
「い、言わないです!」



余程、今吉さんには知られたくないらしく、物凄い剣幕で言われてしまえば、頷く他はない。それにしても何だか意外である。あの青峰くんが怖いものが苦手とは…。教室の隅で微かに震える彼の横へと座る。最初に感じていた気まずさは、何時の間にかなくなっていた。だけど、こうしていても仕方がない。そろそろ動かないと化け物が来るかもしれないし…。



「あの、青峰くん。そろそろ教室を出ませんか?なるべく早く体育館に帰った方が安全ですから」
「…ああ。おい、手ェ貸せ」
「手ですか?何でです?」
「歩くのが遅ェから、はぐれたら困んだろ。…背も小さけりゃ、手もかよ」
「うっ、それは…!私の方が標準であって…!」
「へいへい」
「聞いてます!?」



話を聞き流す青峰くんは、ついでに胸もちっせぇと見事に私の心を抉ってくれる。置いていかないようにと手を繋いでくれた優しさは、その瞬間に全て上塗りされてゼロどころかマイナスになったと思う。ううっ…今吉さんは怖いけど言ってやろうか…。涙を堪えている間に青峰くんは教室のドアを開けてしまう。だが、その目の前には先程の化け物の姿が。震え上がった彼は悲鳴を上げつつも、見事な蹴りを化け物へと決める。そのまま私の手を引いて走り出した。えっと、青峰くんってば、やっぱり強い?普通は蹴れないよね、怖くて。未だに動けずに廊下に転がる化け物を見て、また別の意味で背筋が凍った。どれだけの強さで蹴れば、化け物でも動けなくなるほどのダメージを与えられるのだろうか。





あとがき

リクエストありがとうございました、こたに様。お久しぶりです、覚えてくださっていて嬉しいです。今回は、ヘタレな青峰と絡ませて貰いました。怖いけど、夢主を置いていかないようにするのが私の中の青峰のイメージだったので、このようなお話にさせて頂きました。

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