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入れ換わっちゃった!



「こ、これは…!」
「ぎゃああああ!!」
「くぁwせdrftgyふじこlp!?」



あわわ…阿鼻叫喚地獄だ…。殆どの人が頭を抱え、どうしようもないぐらいに慌てている。まあ、私も混乱してるけど他人が焦ってるのを見てると不思議と落ち着いてきた…。事の発端は、突然の煙であった。それが晴れたと同時に私も含めて全員の性別が変わってしまったのだ。つまり、今の私は男。加えて原理は分からないが制服も男物に変わっている。…うん、流石にね?女子の制服じゃ危ないかな…。多少のショックも拭えずに遠い目をしていれば、やけに落ち着いた様子を見せる赤髪の少女が視界に映った。言わずもなが、赤司くんだ。性別が変わったところで綺麗な容姿には変わりはなかったが、何かしら悟りを開いてしまったような顔に見受けられる。…やっぱり、ショックなんだ。



「あ、あのっ…取り敢えず落ち着きませんか?」
「ああ!?落ち着けるか!!」
「痛いっ!宮地さん痛いです暴力反対!!」
「みょうじのくせに見下してんじゃねぇよ!」
「理不尽!!」



胸ぐらを掴まれ、下へと引っ張られたかと思えば、頭突きを宮地さんから頂戴するはめになるなんて。酷いです…。ご立腹な様子の宮地さんに引き続き、福井さんからも罵倒を浴びたために私は退散することにした。皆さんが落ち着くまで見守ってます。高尾くんがシバかれる様を見つめながら膝を抱えていれば、隣から唐突に聞こえてきた声。それに飛び上がりそうになるのを堪えながら隣へと視線を向ければ、其処には黒子くんの姿が。性別が変わっても影の薄さは健在なのか…。



「大変なことになりましたね」
「はい。黒子くんは落ち着いてますね。皆さん、あんな状況なのに…」
「彼らを見てたら逆に落ち着きました。それに黄瀬君を見てください。物凄くムカつきますよ」
「え?」

「女の子になってもオレってば美人じゃないっスか?」
「死ね!!」

「あ、ああ…なるほど……」
「それに、そろそろ青峰君もアホな事を始めると思いますから」



黄瀬くんって少しナルシストなのかと思ってたけど、彼処までとは…。ポージングを取りながら言う黄瀬くんに笠松さんは容赦ない飛び蹴りを決める。続いて青峰くんを見れば、桜井くんに絡みながら自分の胸の大きさ云々と言いつつ、胸を触っている。何だか男子高校生特有と言えば、特有と言うか…。うん、黒子くんの言いたいことが分かったかも。それにしても美人でも中身が残念だとなかなか…考えるのは止めとこう。パニックを脱し、漸くと落ち着きを取り戻し始めた様子に自然と肩から力が抜けていく。これで話が出来るかな。でも、もう頭突きとかいらない…。



「さて…こうなってしまった原因は先程の煙と考えて間違いないな。早急に元に戻る方法を…」
「あら、征ちゃんってば珍しく焦って―」
「黙れ、玲央」



……女の子の時の方が怖い。あんな美人さんに睨まれたら…。恐怖に身を震わせつつ、何だか性別転換しても全く変わりのない実渕さんを見やった。元からあんな感じだったからだろうか。一方、未だに理不尽な怒りを此方へとぶつけてくる二人から距離を取り、大坪さんの隣へと移動をする。彼は、完全に頼れる姉御と化していた。



「いやぁ、それにしてもどうやったら元に戻るんだろうな」
「だから、今それを考えてるんだろダァホ!!」
「…まあ、原因が煙にしても、その前に何かあったか?」
「…葉山が小箱いじっとらんかったか?」
「これのことー?」



キラキラと目を輝かせながら小箱を振る少女へと視線を向けた。小柄で明るい印象を受ける可愛い猫目の女の子になっていても中身は葉山さん。スカートなのに飛び跳ねようとするのは止めて頂きたい。今だけでも女の子なんだから…。溜め息を堪えつつ、様子を見ていると何やら紫原くんからの視線を感じた。それに小さく首を傾げれば、まいう棒を食べるスラリと背の高い美少女に変わった彼が口を開いた。



「何かさぁ、みょうじさんって女々しい感じの男になったよねー。座り方が正座だし」
「め、女々しい…」
「そのくせに背だけは高いアル」
「そのくせにな」
「前々から思ってたんですけど…そこの三人は私に何か恨みでもあるんですか!?」



初対面の時から散々に言われてるけど本当に何なんですか。そう言ってみても別にーと返してくるだけ。語尾の伸び具合に、よく分からないけどイラッてした。よく分かんないけどね。そもそも女々しいって言われても元が女なんですけど…。し、仕方ないよね…?そう思ったけれど、紫原くんの隣に座っている氷室さんが元は男性のはずなのに洗練された動作をするのを見たところで心は折れた。陽泉さんは、相変わらず私の心を折るのが上手い…。落ち込んでいれば、笑いを堪える原さんに肩を叩かれた。何ですか、その顔は。



「イケメンになっても残念なみょうじさん」
「原さん、あなたの前髪をぶった切らせて下さい。今なら出来る気がします」
「やーだ、これはオレのアイデンティティーだし。つか、何でオレにだけそんな強気なの」
「花宮さんに挑むより原さんの方が怖くないからです」
「判断基準はそこなのか?だが、今の花宮相手なら…」
「古橋さん、無茶を言わないで下さい」
「ふはっ、分かってんじゃねえかよ」



性別が逆転したところで怖いものは怖い。大人しく引っ込み、原因の一端かもしれない箱を調べるの様子を黙って見つめる。その箱は何の変鉄もないものと判断され、取り敢えず体育館内に原因のモノがあるかもしれないとの事で体育館内の探索が開始された。途中でバスケットボールを見付け、テンションが上がった一部を何人かで沈めながら彼方此方と隈無く探していく。その間に真面目に捜索をしていた緑間くんが一回だけシュートを決め、小さくガッツポーズを取るのを見逃さなかった。女の子の体なのに何であんなに飛ぶんだろ…。深く考えてはならない気がした。



「おい、みょうじ。ちょっと頼めるか?」
「どうしたんですか、笠松さん」
「あの上に何かあるみてぇなんだけど、オレ達じゃ届かねぇんだよ」
「確かにそうですね。あれ、でも…私でも届かない気が…」
「そんなの決まってるだろ、みょうじさん。誰かを肩車してくれ」
「ええ……」



肩車なんてしたことないんですけど。あ、はい。大人しくやるので睨まないで下さい、赤司くん。なるべく軽そうで尚且つそれなりに身長がある人物。黒子くんが軽そうだけど身長が足りないとかで却下。そこで白羽の矢が立ったのが桜井くんであった。あまり話したことがないから気まずい…。



「すみませんすみません!僕なんかがみょうじさんに肩車なんてさせて、すみません!」
「え、あ…此方こそ、すみません…?」
「はよせえや、桜井」
「すみません!」



謝り倒す桜井くんを見ていた日向さんが謝りキノコと呟くのを私の耳は聞き逃さなかった。言われてみれば…?そう内心で首を傾げつつ、失礼しますと頭を下げながら肩車をしてしまう。その際にも謝られたのは言うまでもない。そうやって高い場所から入手したのは怪しげな巻物であった。元に戻るための方法。そう書かれている巻物を猛スピードで見始めた彼らの形相に距離を取ることにした。早く戻れると良いな。皆さんの精神衛生のためにも。





あとがき

リクエストありがとうございました、名無様。性転換ネタは初めて書かせて頂きました。楽しかったです。そして、ついに桜井との初絡みが出来た話にもなってます。それにしても絶対に性転換しても怪しい巻物に書かれた方法だけは使いたくない。

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