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普通の恋人とは



嫌悪のif設定で夢主と花宮が恋人同士です


「遅えんだよ、ノロマ」
「まだ時間じゃねえよ。少し早く来たぐらいで何だって言うんですか。男なら黙って待ってろ」
「あ?だったら女らしく待たせたことを恥じて詫びてみろよ」



はーい、とんでもない現場に居合わせちゃった原くんでーす。いや、マジないわ。あの二人のデートの待ち合わせ風景見ちゃうとか。花宮と凌ちゃんが付き合いだしたって聞いたとき本気で、この世の終わりを感じた。ああ、隕石が飛んできて人間全滅しちゃうんだって衝撃を覚えたのは記憶に新しい。つか、絶対に恋人同士で向けるような目と言葉じゃないだろ、あれ。二人してえげつない言葉吐き出してるし。見た目が良いぶん余計に酷く感じるのは俺だけじゃないと思うわけ。



「そんで、どうすんだよ」
「ノープランですか。こないだ観たいとか言ってた映画でも観に行きますか?」
「そうするか」



漸くと話し合いと言う名の貶し合いをやめて映画を観ることに話は決まったらしい。え、つーか普通のデートじゃん。ノープランだったのはアレとして普通じゃん。えっ何この二人。案外とラブラブなの?俗に言う恋人繋ぎなるものをして映画館へと向かう二人は何処からどうみても普通の恋人同士だった。二人して、ほんのりと耳を赤らめて手を繋いでいる。あの二人がそんな事をしているのは奇妙だったけど心配する必要もなさそうだ。別れ際は、すげえ悲惨そうだけど。取り敢えず古橋たちと話題のホラー映画を観る約束をしてたから俺も映画館へと足を向ける。目の前にいるカップルと同じ目的地で野郎どもと映画なんて虚しいけど。そう思うと同時に膨らませていたガムが割れた。



「…………あれ、花宮と東雲だよな?」
「…俺達の目が可笑しくなってなきゃな」
「いや、俺はそっくりさんだと見た」
「逃避しても同じだから」



俺は、ばっちりと二人が一緒にチケット購入するのを目撃していた。あの花宮が凌ちゃんの分まで金を払ってたのも知ってる。でも、こうなるよな。やっぱ可笑しいよな。デートの時にホラー映画ってあり?普通は恋愛ものじゃね?俺たちが当初から観る予定だったホラー映画は、外国ものでそれはもうグロテスクとの評判がある。それをデートで観るものなのか?そう思ったところで二人には常識が通じないことを思い出した。俺たちよりも前の席で並びながら互いに視線は前を向いたまま。あまりの光景に周りが悲鳴を上げ、他の常識あるカップルが抱きつきあって怯えているのに平然と。時おりポップコーンを摘まんでるだけで動きはない。俺は、これ以上あの二人のデート現場を見ている勇気はなかった。



「思ったより面白かったですね。けど、あの女優の演技はいまいち。悲鳴が煩いだけでした」
「ふはっ、あの金切り声な。死ぬほどうざかった。つか、言うほどグロテスクでもなかったな」
「普通ですよね、あれ」



いやいや、ないわ。ないって。見てる勇気がなかったから二人よりも早く映画館を退場したのに何でいるんだよ。仲良くカフェでご飯食べながらその話ってどうなんだ。しかも相当グロテスクな映画だったんですけど。感覚おかしいよ、こいつら。他の三人なんて必死で見ざる聞かざる言わざるを貫いている。やっぱ精神的にきついんだよな、あの二人。どっか行かないかな。さっさと立ち去ってくれる事を願いながら目の前の料理をつつく。カフェ内の人間は美男美女カップルの二人にちらちらと視線を向けている。内面は、どうしようもねえ二人だけど。



「そう言えば、本屋行きてえとか言ってたよな」
「欲しい本があるんで。良いですか?」
「ああ。そろそろ視線も鬱陶しいから行くぞ」
「わかりました」



ああ、漸くと恋人らしく買い物デートするのか。妙な威圧感は、二人が会計を済ませて出ていくとともに消えていく。そっと息を吐き出しながら寄り添うように歩く二人の姿を何となく見つめていた。話ながら歩いてて見たことないぐらいに穏やかな柔らかい表情を向け合っていて。珍しいもん見た。率直にそう思った。だってさ、二人って何時も当たり障りがない完璧な笑顔じゃん?あんな慈愛に満ちた表情するとか想像もできなかったわ。言動はどうあれ、ちゃんと好きあってるんだなって思った。



「下僕の躾方。どうですか、これ」
「馬鹿か、てめえは。こっちの世界の拷問辞典の方が面白いに決まってんだろ」
「生憎と拷問は趣味じゃないんで。どれだけ効率良く屈服させて言うことをきかせるかが重要です」
「ああ、それも一理あんな。俺的には歯向かってきた奴は、滅茶苦茶にしてやんねえと気が済まねえけど」
「いやぁ、根性腐ってますね。こんなのと付き合う奴の気が知れないです」
「俺もお前みたいな利己的で性格が最低な女と付き合う奴の気が知れねぇよ」
「でも、計算高い男は好きですよ」
「ふはっ、俺も計算高い女は好きだけど」



えっ何あの二人。もうやだ怖い。本屋行くとは聞いてたけど何でそんな本を見てるんだよ。ぜってえ可笑しいって何なんだよ。しかも、その流れで好きとか言っちゃうんだ。あんたらの思考回路どうなってんの。ついにザキが倒れたけど、そんなん俺が倒れたいわ。朝から見てんだぜ?どれだけ良い雰囲気作っても手にしてる本で台無しだから。この二人が普通の恋人みてぇになる日なんて来るのだろうか。来たら来たで怖いんだろうけど。そして俺は、このせいで普通の恋人が分からなくなった。





普通の恋人とは

まこちゃん、何かザキが見えます。しかも泡吹いてる
ほっとけ。つか、俺といんだから他の男見てんな



リクエストありがとうございました、蒼和様。if設定で本物の恋人になったらとの事でしたので、恋人同士の二人のデートを他人が見たらどう思うかを書いてみました。やっぱり、この二人が普通に恋人同士やってるなんて考えられなかったので、こうなりました。そして最後の言葉をどうしても言わせたかった…趣味に走ってごめんなさい!ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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