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悪くはない



中学生時代です


「Wデート?」
「そうそう。花宮先輩と同じクラスに彼氏がいるから誘ってると思うんだけど、そう言うのがしたいなぁって思って」
「そう、なんだ…」
「ねっ!良いでしょ!?」
「先輩に訊いてみるね」



ノーとは言えず、曖昧に返事をしておく。また面倒なことになったと思いながら、花宮に話が回っているなら何かしら言ってくるだろうと思考を放棄した。それが木曜日のことである。やはり、品行方正の誰にでも優しい優等生は断る事が出来なかったらしく土曜日の朝には遊園地にいた。明らかに機嫌が悪い花宮に凌は、だったら断れよと独りごちる。しかし、用意周到にチケットまで用意されていれば断りにくいのもまた然り。仕方がないかと落ち着いた色のワンピースの裾を直しながら思った。Wデートとは言え、恋人同士ならば直ぐに二人きりになりたいと別れることを予想し、早々に帰れるように言い訳を組み立てる。計画が練り上がったところで手を繋ぎながら前を歩いていた友人が振り返った。



「じゃあ、また後でね」
「うん。楽しんできてね」
「そっちもねー」



幸せオーラ満開でアトラクションへと向かう二人にWデートの意味を問いただし、お前らだけで行けよと言ってやりたかったのを、ぐっと堪える。そして二人が見えなくなったところで繋いでいた手を離し、どちらからともなく溜め息を吐き出した。とんだ茶番に付き合わせやがってと吐き捨てるように言い、舌打ちを漏らす。凌は既に帰りたかったし、それは花宮も同じである。だが、早々に帰ってしまえば怪しまれるため実行には移せない。



「で、何で断らなかったんですか馬鹿じゃないんですか。そんな不機嫌極まりないって顔されても困るんですけど」
「逆に何でテメェも断らなかったんだよ」
「後で文句言われたくありませんから。断ると思ってたのに予想外ですよ、まったく」
「あ?なに気が利かねぇなって面してんだよ、性悪女」
「あんたに言われたくねぇよ、くそ眉が。取り敢えず一回、死んできてくださいよ」
「ざけんな。……つか、これからどうすんだよ」
「下手に別れてかち合ったら問題ですね。一先ず絶叫系で無様に助けを乞う花宮を嘲笑いたいです」
「ほんっと良い度胸してんな、テメェは。例のホラーハウスで泣いてすがって助けを求めても知らねぇからな」



この遊園地の絶叫もホラーハウスも都内では有名なもので、とにかく怖いと言われている。互いを貶し合いながら先ずは無難にジェットコースターから始めた。しかし、周りが叫ぶなか顔色一つ変えずに乗っていく。それがどのアトラクションに乗っても変わらず、つまらないとばかりに再び貶し合いが開始される。その内容は訊くに堪えないものばかりであるが、当人達は気にもしない。道行く人達が振り返ってもだ。



「くそつまんねぇな、おい。ちっとは女らしく叫べよ」
「あんたがな。これじゃあ運営会社もがっかりですよ」
「つーか、あんなもんでよく叫べんな」
「ですよね。…そろそろ帰っても大丈夫そうですね」
「結構、乗ったしな。電話は自分でしろよ」
「ええ、花宮先輩が絶叫で無様にも気分が悪くなったて言っておきます」
「ふざけんな、テメェが無様に絶叫でグロッキーになったて言ってやるから寄越せ」
「は、何でそんな不名誉を」



どちらが電話を掛けるかでえげつない言葉ばかり並べていれば、遊園地のスタッフに声を掛けられた。瞬時に笑顔を貼り付け、仲が良い恋人を演じる。そうして何故か帰る前に観覧車に乗ることになってしまった。何でもカップル限定の内装がされているとか何だか。至極どうでもいいものだったが、ごり押しをされて逃げるに逃げれなくなってしまう。大人しく向かい合いながら何でお前となんかと、二人で同時に呟いた。



「真似しないで下さい」
「してねえよ。キモいからヘラヘラすんな」
「心外ですね。あんたの猫かぶり様の方が気持ち悪いです何ですかあの面は」
「自分の面みてから言えよ」
「品行方正の花宮先輩の品位を疑いますよ。女性にそんな事言うなんて」
「ふはっ。女性っつたか、いま」
「うわぁーマジうぜぇ」
「ほざいてろ、負け犬。……ほらよ」
「毒ですか。それとも爆弾ですか」
「てめっ、本当に人を何だと思ってんだよ」
「博愛主義を掲げて、その下にどす黒い感情を持った下劣な野郎です」
「テメェだけには言われたくねぇ」



そんな会話をしながら袋に入れられた物を出せば、それはこの遊園地のキャラクターのビーズで出来たキーホルダーだった。何故こんなものをと疑問の視線を向ける。決まりが悪そうに花宮は舌打ちをした。



「見てただろ」
「まあ…」
「いらねぇなら返せ」
「いえ、欲しいです。ありがとうございます」



両手でキーホルダーを包みながら柔らかく微笑みながら礼の言葉を口にする。こんな休日も悪くはない。ああ、けどあのバカップルは腹が立つな。





悪くはない

月曜、何か奢れよ
死ねよ。今の私の感動返して下さい



リクエストありがとうございました、tea様(*´ω`*)
花宮と言う事でしたが、どうでしょうか…?たまには、この二人も一応は恋人なのでらしいことをさせようと思ったらこうなりました。でも、どう転んでも口が悪くなりますね。
花宮との絡みがお好きなようだったのでもしや、拍手の方で続編を希望くださった方かなぁと思いながら書かせて頂きました。勘違いだったらごめんなさい(ノ_<。)

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