私は やしろ。
夏休みが始まっていきいきしている高校生である。どちらかというと教室の隅で生きるオタクと呼ばれる部類の人間である。
ちなみに告白されたことはまだない。
まあ、そんなことは皆さんどうでもいいだろう。
何故我が家の郵便受けにぬこがいるのか。
しかも目つきが我が校の騒がしいリア充たちを裁いたり裁かなかったりな石田くんによく似ている気がする。…いや、そこまで彼を知らないけど。
しかも彼を連想させるさらさらの銀色の毛なのだ。
前髪っぽいのがツンとしているのだ。
まさに石田くんじゃないか。
というか今更ながら郵便受けに猫って愛護団体とかに訴えられないか。
そう思いぬこを郵便受けから出して観察してみる。
石田くんでいうキサマァァア!みたいな感じでべしべしされた。痛い。
「本人だったりして」
「マーオ!」
「本人?」
「マァオ!!」
「じゃあ君の名前は三成くんね」
綺麗ななりだから飼い主がいると思ったけれど、夏休み終盤になってもその人は現れなかった。
そして、夏休み最後の日。
銀色の猫はいなくなった。
学校が始まる、今日。
不思議なことに石田くんに話しかけられた。
「おい、 やしろ!」
「え、あ、石田くん?何かご用ですか?」
「き、貴様ぁああああ!!何だその余所余所しい態度は!私を裏切る気か!」
「そんなこと言われても喋るの初めて…」
非常に困った。
叫ぶ石田くんを回収しにきた竹中先生から「彼が世話になったね」と意味深に言われた。
そんな、まさか。
私の非日常はここから始まった。