3 | ナノ

ないものねだり




生きる意味を探すために生きるのか。生きるために生きる意味を探すのか。

無知であり未知であり白くつまりは虚無感こそが人間の生きる糧であり、それ故に絶望し、あるいは希望を見出だす。

嗚呼、かなしきかな素晴らしき世界よ。醜いからこそ美しいと。

そうやって生きて疎んで妬んで羨んで、片や疎まれ嫉まれ羨まれ、劣等感と優越感の中で、そんな汚い人間はそれを愛と呼んだ。


綱海の骨張った指が俺の髪をすくってはこぼす。優しく微笑みながら奴が呟いた。


「何考えてんだ?」


ん?と促され閉ざしっぱなしの口を開いたけれど何を言えばいいかわからない。別に何も。そう呟くと相変わらず笑顔のまま続ける。

「俺難しいことはわかんねーけどさ」

温かい唇が額に触れる。

「愛してる・・・不動」

お前のその髪も、目も、肌もそれから、

奴の薄い唇がそう呟いて、でも俺はその焦げ茶ではなく温かな桃色の髪も、深い緑ではなく深い漆黒の瞳も、白い肌ではなく浅黒い肌も好きだった。ああそうか、とそっと目を伏せた。


どうしようもなく胸が苦しくなって鼻がつんとする。続きを紡ごうとした唇に自分のそれを押し付けた。







(その甘美な響きに潜む)



あとがき

無償の愛を受け入れられない不動と愛しすぎな綱海
重くなっちまった…

20101228






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