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※暴力表現



マゼンダの追憶






死ねと言えば酷く悲しそうに笑うその顔が憎いほどに好きだった。鉄パイプを振り上げて頭をぶった。血が飛び散る。源田の呻き声が上がって地面に倒れた。足元に転がってきたから邪魔で仕方なくて鳩尾にスパイクをはいたままえぐるように蹴ると今度は血を吐いた。地面にはどろどろと血が広がり鉄の臭いが鼻をつく。荒い息と呻き声がじわじわと聴覚を刺激した。あれ、この光景何回目だっけ。

「はっ、ざまあねぇなァ!おらっ!」

「う、ぐっ!」

酷く咳込みひゅうひゅうと抜けるような息遣いが耳障りでもう一度蹴った。


「やり返せばいいじゃねぇかよ、あ?それか防げばいいだろォ?」

この大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切なお前の手で。


力無い腕を持ち上げ鉄パイプを振りかざすと源田の顔色が微かに変わった。


「なあ、俺に頂戴。源田の大切な手、俺に頂戴」


全部全部欲しいのだ。例えば足や腕や目や耳や口や肺や心臓や、源田を源田たらしめるその全てが。そうして初めてきっと俺は人生で初めての愛の形をこの手中に収め安心することができるのだ。


可笑しくてたまらくなって声を上げて笑う。源田は一度俺に視線を合わせると静かに、いいぞ、と言った。

「かまわない。不動にならくれてやっても」

「……あーあ、やめだやめ。つまんねぇの」

腕を離して鉄パイプを部屋の隅に転がすとそれはガランと音を立て赤い線がつうと地面に走った。つったったまま源田は暫くしてようやく態勢を起こした。息を整えようと肩が震えてそれから俺の右腕を掴んだ。べちゃりと血がついてぬるりとすべる、その感覚に興奮さえ覚える。

「別にくれてやってもいい」

掴まれたその腕は源田によって源田の手を掴まされた。驚いて源田を見ると頭から血が流れ落ちていた。視線で追いかけると赤い雫は左目を遮り頬を伝い顎からぼたりと俺の手の甲に落ちた。嗚呼、綺麗だ。

「代わりに不動をくれるなら」

俺の右腕を掴んでいたその手はゆるりと俺の頬をつつんだ。頬にもべとりと血がくっついて生暖かいそれに、或いは源田のぎらぎらとした眼差しに、ぞっとしつつも傍ら陶酔する。

「物好きが」

「もう泣くな」

真っ赤な親指の腹が俺の目尻をぐいと力強く拭った。ふと微笑んだ源田の唇は血濡れて真っ赤で俺は気づいたら唇を重ねていた。目を閉じると瞼を血が撫でてすっかりどろどろになるとぞわりとした快感が背筋を走った。









あとがき

真帝不動と源田は不安定がいいです特に不動。好きなのに酷いことしちゃったり無意識に泣いてたりふと我に返ったりそんなん希望。すっげーお互い依存してたらいい、んで毎回同じやり取りしてたら可愛いと思います。
20110126




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