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しっしょう






「お前が休むなんて珍しいな」

咳をしながら上体を起こすと不動が手で寝とけと制したけれど首を振る。自分でも酷く緩慢になったのが分かった。

今日は珍しく風邪をひいて学校を休んだ。そうしたら不動と佐久間が家に見舞いに来てくれたのだった。不動が鞄をごそごそと漁ってファイルを取り出しさらに中からルーズリーフを取りだして渡してくる。綺麗な顔立ちだなと思う。大きな翡翠が照れ隠しか心なしか多めに瞬いた。

「今日の授業分」

「本当か?!ありがとう」

心配事がなくなり俺はほっと肩を撫で下ろした。にしても字が綺麗で驚く。意外だと思いつつ何枚かあったから紙をめくりながら授業はどんな感じだったかと尋ねると不動が呻った。

「あーなんだっけ。とりあえず生物が進んだ?」

「そうだな。不動お前覚えとけよ」

佐久間が苦笑して不動ははいはいと答える。居心地がよくて笑みが零れた。不動があっと声を上げるから再び紙から顔を上げる。

「そうそう。遺伝子でホモ接合体とか出てきたんだよな」

「あったなー。お前キモイ連発してなかったか?」

「だってホモとかきめーじゃん」

「まあ確かになー。源田も気持ち悪いと思うだろ?」

二人はげらげら笑いながら俺に話を振る。声が出なかった。
だってきめーじゃん。脳内で何度も不動の声が響く。そうか、そうだよな。世間的にももちろんこの二人にも、いや、不動にとっても気持ち悪いことなのだ。男が男を好きになるっていうことは。つまりは俺が不動を好きになるっていうことは。

「…いや、俺は別に…」

辛うじて言うと不動が「出たよ源田の優しさ」とからかうように笑う。俺は曖昧に微笑み返した。上手く笑えているだろうか。





(できればなにも知らないままで)




あとがき

不動がノンケだったら
源田つら・・・
笑うことで失うこと。
20110115



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