3 | ナノ
366日目について
「調和を乱して場の雰囲気を悪くしてお前がどれだけ迷惑かわかってるのか?俺はお前が嫌いだ」
突然いつもの声色とはちがったそれで話し出した不動に風丸は眉をひそめた。同時に思い出したのか苦虫を潰したような顔になる。不動はその様子を横目で見て楽しそうに笑った。
「お前が俺に初めてまともに話しかけたときのセリフな、今の」
「・・・・・・覚えているよ」
喉を鳴らして笑う不動を憎たらしそうに風丸は見据え溜息をついた。小さく悪かったと続ければ不動の向いの席に座る。
「でも風丸クンはDFする気あんの?ドリブルは早いかもしれねーけどシュート技ばっかでDF技の特訓とかしてんのかよ。そっちの方が場を乱してねぇ?」
「・・・それ俺の真似?似てねぇなあ」
「似てるね。あの時の不動の勝ち誇ったような顔といったら」
凄く腹が立ったぞ、あれは。風丸は言葉とは正反対に糸がゆるんだように静かに笑った。不動はなおも喉で笑い窓の方に視線をやった。
「でもどう転ぶかまじでわかんねぇよなあ」
「今では一緒に居るんだからな」
「寝るときもな」
「不動!」
のんびりとした雰囲気の呟きに意地悪そうに不動が怪しく笑い茶々を入れると風丸は頬に朱を走らせいなす様に怒鳴った。その反応が面白かったのかげらげらと笑う不動に風丸は呆れたように微笑んだ。窓の外では鳥のさえずりが聞こえる。春の訪れはもうすぐそこまで来ていて暖かい日差しに二人して目を細めた。静かな葉の揺れる音がして暫くその空気に身をゆだねていたが風丸が不動に視線を戻した。
「結婚しようか」
風丸はすんなり零れた自分でも予想外だった言葉に内心驚きつつけれどどこか落ち着いた心持ちでそう問いかけた。優しい微笑を湛えた彼の顔を不動はちらりと見て嬉しそうに苦笑した。
「ばーか、雰囲気がねぇよ」
これだから風丸クンは、そうぼやくと風丸が「おまえも風丸になるんだからいいかげん名前で呼べよ」と催促する。これには益々苦笑して不動は頭をかいた。
「一郎太はお子様っぽいとこがあるからな、いーよ、結婚してやっても」
珍しく不動ははにかんで風丸は小さくそうか、と呟く。そうか。二度繰り返して幸せだといわんばかりの笑顔で「ありがとう」と風丸は言う。再び視線を窓の外にやった不動は静かに頷いただけだった。
「明王、二人で一緒に幸せになろうな」
「風丸くんらしーねぇ」
互いに顔をほころばせて春の息吹に目を細め耳を済ませる。幸せの足音はもうすぐそこまで迫っていた。
あとがき
ちなみに個人的には
源田→「幸せにする」
風丸→「幸せになろう」
綱海→「お前と居たら幸せ」
こんな感じ。すいませんほんと。
20110109
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