3 | ナノ




不意打ちにつき







※アニズマ85話あたりにつき閲覧注意





…気持ち悪い。


飛行機での長旅を終え回りは初めて踏み締める外国の地に興奮し楽しそうにしていたが自分は気持ち悪すぎてそれどころではない。むしろまっすぐ歩くこともままならず情けないことこの上ないがこればかりは仕方ない。


「ヤワだな。お前まじで泳いできたほうが良かったんじゃねぇの」


いつの間にか隣に不動が立っていて相変わらずの皮肉を投げかけてくるが本当にそうすれば良かったと思うほどで言い返す気力すらない。視線はなんとか不動をとらえた。


「げー、普段煩い奴がこうも静かだと気味悪いぜ」


顔をしかめて肩を竦めた不動は俺の腕を掴んで引っ張った。突然のことと気分が悪いことが重なってされるがままにバランスを崩しベンチに倒れるように座り込んでしまった。


「……なにすんだよ」

「声小さ。ほら酔ったんだろーが。休んどけばあか」

「…他の奴ら、は?」

「トイレ休憩だかなんだか知らねぇが20分くらい自由だ。マネージャー達は荷物整理やらで時間かかるらしい」

だから休んどけともう一度言われて伝えられた状況を反芻しつつ頷く。気分が悪すぎて話も聞いてなかった。そんなうちに不動はどこかに行ってしまった。


一人でぼうっと座っているといくらかましになってきた。深く息を吸って吐く。気合いをいれて立ち上がるとまた視界がぐらりとした。


「耳がねぇのかお前は」

揺れた体を肩を使って支えてくれたのは不動だった。半ば無理矢理座らされて呆れたようにため息をつかれる。

「休んどけっつっただろ。まだ時間はあんだから…ったく…ほら!」

説教じみた口調は怒っているようにも聞こえて正直参るなと思っていたら眼前にミネラルウォーターが無遠慮に差し出された。


「え?」

「飲め。少しはよくなるだろ。あとこっちら酔い止め。気休めかもしれねーけどないよりはましだろ」


続けて錠剤も差し出される。…まさかこんなに面倒見がいいとは。意外すぎてじっと見ていると痺れを切らした不動が無理矢理それらを握らせた。


「薬はマネージャーに貰ったやつだし水は自販機の。毒なんか入っちゃいねぇよ」

俺がなかなか受け取らないのを不信感からだと思ったのか不機嫌丸出しでそんなことを言う姿が可笑しくて少し笑ってしまった。

「そんなこと思ってねーって…さんきゅ」

礼を言って錠剤を口に含み水で流し込むのを見届け不動は何も言わず去っていった。去り際に見えた顔は興味無さそうなしけた顔で(まあ今の俺が言えたことじゃないけど)そんなわけで猫みたいなやつだなあと思いつつその気まぐれが嬉しくて不思議と暖かい気持ちになる。気分はいつの間にかよくなっていた。








(どうやら不覚にも掴まれたらしい)




あとがき

不動は本気でめんどくせーなぐらいにしか思ってないけど
単なる気まぐれな訳だけど
にーにはここで好きになる、みたいな。妄想乙。
2010107



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