3 | ナノ
赤の誘惑
「今日は苺の日なんですって」
音をつけるならさしずめきらきら、と言ったところだろうか。そんな輝かんばかりの笑顔を浮かべつつ苺の入った小ぶりな器を両手で胸の前で持ち立向居は言った。
対する不動は訝しげに眉を潜め読んでいたサッカー雑誌からチラリと視線だけを器に向けた。
「1月5日だから苺の日です!不動さん食べませんか?」
納得したようなくだらないとでもいいたげな顔でふぅんと生返事を返した不動は片手を伸ばし1粒つまむと口に運んだ。
「おい…すっぺぇよ…」
不動が眉を寄せて不満を零すと立向居は待ってましたと言わんばかりに胸をはる。
「そりゃそうですよ、ちゃんと甘く感じる食べ方があるんです」
「…尖ってるほうから食うとか?いやヘタのほうからか…?」
自信有りげな後輩にむっとしたような顔で考えこみぶつぶつと呟く不動に立向居は違いますよ、と笑う。とりわけ小さな1粒をつまむと自分の口にほうり込み器を床に置いて右手は不動の肩を掴み左手は不動の頬を包むように押さえ口づけた。目を見開いたままの不動の唇を器用に舌で割りそのまま歯列まで割ると口内の小さな苺を口移しする。唇を離して、けれど顔の距離はそのままに「こうやって食べるんですよ」と囁いた立向居を不動は唖然と見つめ口内の苺を思わず咀嚼する。立向居はくすりと笑って不動の唇を一舐めして甘いなあと呟く。暫くしてようやく状況が飲み込めたのか不動は真っ赤な顔で怒鳴りながら立向居を突き飛ばした。
「なっなにしやがんだ!」
「オイシイ苺の食べ方ですよ?」
「おいしくねぇよすっぺぇよ!」
ぎゃあぎゃあと喚く不動を立向居は力一杯押し倒して苺の入った器を目の前で揺らした。翡翠もまたひたすらに驚き揺らめいている。
「じゃ、甘くなるまで全部試してみましょう」
緩く妖しく弧を描いた唇がまた苺を含んだ。
(いただきます)
あとがき
どうしてこうも皆盛りたがりなんですかね
お年頃だからですね!
立向居・・・強い・・・てか昨日ネタさーせん
20100106
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