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アダムのリンゴを盗んで






源田の目線がすれ違った女にぬいつけられて俺が話しかけても生返事しかしなかったからイライラして耳を引っ張った。親指と人差し指ではさんだ耳朶をおもいきりつねる。

「いっ!何するんだ!」

「話しかけても鼻の下伸ばして女見てっからだろ」

気に食わないからつねるのをやめないでいると源田が痛そうに呻った。

「悪かった、いや見てないぞ、見てないけど悪かった」

「嘘くさ」

俺も指が冷たくなってきてつねるのをやめた。男にすりゃ細い方だけどやっぱり男だから骨ばった指。小さく溜息をついてさっさと自分のポケットに突っ込むと源田が気持ち悪い笑顔でこっちを見ていた。そりゃもう満面の笑みで。

「嫉妬か?」

「んなわけねーだろ」

「素直じゃないぞ」

機嫌良さそうに俺の顔が赤いと指摘してきやがった。むかつく、調子よすぎ。寒いから顔が赤いんだっつーの。胸糞わりぃ。
狭い路地裏に入ったら源田が急に壁に押し付けてきた。一層影が増す。

「盛ってんなよ」

「そういうわけじゃないんだが」

言いつつ耳を舐めてきたこいつは大概変態だと思う。声が漏れそうになって下唇を噛んだ。それに気づいたのか源田が唇を親指でそっと撫でて傷になるぞと囁く。そのまま唇は攫われて奴の唇は首を這う。喉を舐められてぞくりと震えた。思わず喉が鳴る。自分でも分かるぐらいだったから源田にも伝わっただろう。喉をそっと撫でられて源田の目を見た途端に泣きたくなった。いまだ緩やかに撫で続けるそれはまるでなければよかったのにとでもいいたげだった。












あとがき

喉仏は男の子の印
20101231



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