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スロウスノウ





どうすんだよ。
刺すようなしんとした空気を裂いた声を辿れば肩を怒らせ首を深緑のマフラーに埋めたチームメイトが立ちつくしていた。睨みつけるような翡翠は僕を捕らえて離さない。

「特に、何も」

また背を向けて呟きマフラーを口元に寄せた。ざくざくざく。雪を踏み分ける音がやたらに響く。苛立ちが感じ取れるそれは僕の真横でピタリと止まった。視線をやると今度はこちらを見ない。翡翠が長めの睫毛に隠れて何を見ているのかさえ計り知れない。

「凍え死んじまうぞ。」

それは不動君だろ、と言おうとしてちらちらと降る雪に鳩尾がぎゅうと締め付けられた。結局音にならなかった言葉はしばらく頭を支配しただけだった。鼻がつんとする。きつくマフラーを寄せて鼻を覆った。

「・・・寒いね。」

「ばあか、それならさっさと帰るぞ。」

付き合わせてんじゃねぇよ。ぶっきらぼうに言い落とされたそれに苦笑いを返した。口元は隠れているからそれが伝わるわけはないけれど。外に行こうと半ば無理やり寒い中連れ出した割りに何をするわけでもなく突っ立ったままでいるのによく彼がここまで付き合ってくれたなあと感慨深い物に包まれたのは言うまでもない。

「泣いてから来てもいいんだぜ、俺は帰っから。」

「泣かないよ、ほら、帰ろう。」

「はっ、弱虫がほざけ」

翡翠が漸く俺を射て彼の掌が思い切り俺の顔を包むように叩いた。変な声が出て寒さのせいかじんじんと痛む。不動君の指の冷たさが顔を覆った。

「顔つめて」

「痛いんだけど」

「じゃ、泣けば」

「・・・」

しんとした空気が体を包んで身動きができない。ざくざくざく。雪を踏み分ける音は遠ざかっていく。眉根を寄せた顔が忘れられなかった。


一面の白い世界にため息をついた。震える白い吐息が視界を覆って歪んだかと思ったら滲んで崩れ落ちた。頬が温かい。
確かに、生きている。







(さよならから生まれた)




あとがき

サブタイトル:brooch様

完全に吹+不である。
きっとこういうとき何も言わずに待っててくれるのは
不動だと信じている。余計な詮索もフォローも何もしないっていう。
20110102



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