ギブミー!
学年が1つ違うと言うだけで部活が同じと言えど会う時間は削られる。それでも会いたいから毎日理由を付けては会いに行き、果ては理由を付けるのが面倒臭くなり、それでも会いに行った。ところがここ数日間見ていない。久々に廊下で見つけた姿は気のせいだろうか、やや不機嫌そうだった。
「お、不動ー!久々じゃん、サボんなってー」
「テメェにゃ関係ねーだろうがよ」
肩に置こうとした手を振り払われ仕方なしに手を降ろした。気に障るようなことはしてないはずだ。
「関係あるだろ、だって俺たち付き合っ」
声がでかいと口を塞がれながら一喝される。また渋々諦めてみるが気のせいじゃなかったらしい。なんでこんな不機嫌なんだよ。
「何かあったのか?」
「べっつにー」
ぜってー何かあったなこれは。どっちかってと俺が怒りたい気分だ。なにせ恋人のこいつにバレンタインをすっぽかされた。風邪云々なら考慮しようとも思ったがどうやら違うみたいだな。頭を掻いて溜息を吐いてしまったのは仕方ない。
「つーかお前さーバレンタインに彼氏放置ってどういうつもりだよ」
腕を組みながら聞くと今度は不動が溜息を吐いた。身長差のせいだから仕方ないのだが下から睨みあげられて少し怯んでしまう。
「俺なんかに貰わなくても綱海は腐る程貰ったろうが」
鼻を不愉快そうにならして不動は踵を返し去って行こうとするのでその手を反射的に掴み引き寄せる。突然のことにバランスを崩した不動が胸に倒れこんで来てそのまま後ろから抱きしめた。
「ばっ、綱海ここ学校」
ジタバタと忙しない不動を一層強く抱き締め、誰も居ねーよと言ったら大人しくなった。耳元に口を近づける。
「ヤキモチかあ?」
「…るせ、悪ィかよ」
耳を真っ赤にしてボソボソと応える姿に胸が温かくなる。ふわふわの髪に口づけた。
「俺が好きなのは不動だけだって」
「あ、そ。…てか離せよ!」
再び暴れ出したのでパッと離してやると赤い顔で睨まれた。これっぽっちも怖くないもんだから笑っちまう。
「ちなみに今年はお前に貰えると思ったからさー全部断ったんだよなあ」
態とらしく収穫0かと肩を竦めると不動が居心地悪そうに視線を彷徨わせた。可愛い。もう一押しか。
「チョコ食いたかったなー」
「ああ分かったよ!確か家に材料が…」
コレは驚いた。まさかの手作りにありつけるらしい。からかおうかとも思ったが機嫌を損ねてお預けになったら敵わない。でも3日も遅れたんだ、わがままくらい許されるよなあ?
「不動が口移しで食わせてくれねーかなー」
「はあ?馬鹿か」
「あっ今日何日だっけ?14じゃないよな?」
「…くそ、やればいーんだろ…ったく」
思わずガッツポーズを作ると不動が呆れたように笑った。ああマズイ抑えらんね。
「不動、この後の授業サボってお前ん家な。チョコ早く食いてー」
仕方ないねぇ条介くんは。不動がまた気だるげに、けれど幸せそうに笑うからこんなバレンタインもありかな、なんてさ。
あとがき
遅ればせながらハッピーバレンタイン!高校おんなじなんてありえないかもしれないけどそこは超次元だから皆おんなじ高校行けばいいと思うよ!
20120217
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