06


ミナト君の口から発せられた声はいつもの優しいものではなくて、やっぱりいつもより鋭い怒ったような声が私に突き刺さる。

「どうして誰にも…俺にちゃんと言わなかったの?」
『それは…、その、大丈夫かなって…思った、から………』


語尾に向かうにつれて声がだんだん小さく、顔を俯かせてしまう私の前でミナト君はしゃがみ込む。碧い目が私のそれを捕える。


「俺には…大丈夫に見えないよ、まりちゃん。」
『……、ど、して?』
「ん、だってさっきから辛そうだよ?」
『ぅ…』

自分ではうまく隠せてると思っていたが、顔には出ていたらしい。自分の情けなさにため息が出そうになる。
(ミナト君には心配かけたくなかったのに……。)


「それに…」

ミナト君が一度言葉を区切る。


「それに、まりちゃんがそんな顔してると心配になるよ」
『!?』

さっきの鋭くて怒っていた声はどこかへ行ってしまい、すこし小さくて困ったような声が私の斜め下ら聞こえた。その声にドキッとしてパッとミナト君の方を向くと、彼は声と同じ顔をしていた。


『ミナト、君……?』

一度その目を見てしまうと、不思議とそれから目を逸らせなくて、彼のまっすぐな瞳を受け止めることしかできなくなった。

「今度からはちゃんと俺に言ってね?」
『、うん。』

気づけばミナト君の言葉に私は反射的に返事をしていた。するとミナト君は嬉しそうに笑って立ち上がり、私の頭を優しく撫でた。そして今度は私のに背を向けてしゃがみ込んだ。


「ん!じゃあまりちゃん乗って」
『……ぇっ?』
「そんな足じゃ歩けないからね」

ほら、とミナト君は私を振り返って言う。

『でも……そんなことしたら坂道だから危ないし…』
「ん、この道なら慣れてるから大丈夫だよ」
『…私、重いし……』
「そんな事ないよ」
『ミナト君に迷惑かけちゃうし……』
「ん!それは絶対にないから!」
『……』
「ん、俺のことはそんなに心配しなくても平気だよ、まりちゃん。」
『じゃぁ……その、お願い、します…。』
「ん!!」



お邪魔させてもらった背中に顔をうずめた私はミナト君が赤くなっているなんて知る由もなった……―――


上がる体温に心地よい涼やかな風


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