コーディから「珍しく身体を壊した」という内容の連絡がきたのは昨夜の事だった。
こちらからもあまり連絡はしないが、向こうから連絡が来るのは尚更珍しいので余程具合が悪いのかと酷く心配をした。

「酷い声でござるな…いま何処に居るのだ」
『さあ、どっかの路地裏…』
「何故そんな所に居るのだ、悪化したらどうする」
『…なあ、お前んとこ行っても良いか』
「そんなに体調が優れぬのなら、刑務所に戻れば良いではないか」
『…………』

自分を頼って連絡を寄越してきた事に本心では淡く喜びながら、しかし決して表に出さずに少し突き放した言い方をする。
例え共に悪を滅ぼした唯一無二の戦友とはいえ、今の彼は紛うこと無き犯罪者であり脱獄囚なのだ。この携帯も、その辺のゴロツキを殴り飛ばして拝借した物だろう。
それらを簡単に認めてしまう事は友人として出来なかった。
…それなのに、電話越しでも分かるいつにも増して更に気怠げな声と沈黙の中でも聞こえてくる少し荒い辛そうな息遣いを聞いていると、突き放す言葉とは裏腹に放ってはおけないと胸がざわつくのを感じる。

「コーディ殿?」
『…あそこじゃあ弱味なんて見せらんねーんだよ』

沈黙を破り名を呼ぶと、溜め息がちに酷く弱々しい言葉がこぼれた。そのいつになく素直な物言いにざわついていた胸が大きく鼓動を打つ。
─そうか、弱味を見せてくれるのか。拙者には。

気を抜けば緩みそうになる口許を引き締めて、そんな胸の内を出来るだけ悟られないよう短く「今から迎えに行く」とだけ伝えて電話を切った。
こうして自分はまた、いつものように彼を甘やかしてしまうのだ。






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