就+親でギャグ
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「見ているがよい長宗我部よ、我の策に不可能は無い。」
「言ったな?じゃあ間違えずに後ろの正面当ててみやがれ。」
籠目籠目
「かごめかごめ、籠の中の鳥は…」
毛利元就を中心に輪を作った毛利軍の兵士が歌いながら回る。
それを長宗我部元親は目を細めながら見ていた。
(絶対に、できるわけがねぇ)
事の発端は戦前の会話、元親の一言。
「お前の兵も気の毒だよな、名前も覚えねぇような冷たい主に仕えるなんてよ。」
何となく発したその言葉に、意外にも元就が食いついてきた。
「何を申すか。我とて捨て駒くらい把握しておる。」
「元就様…」
感激した風な毛利軍の兵士たちを元親は呆れた目で見遣る。
「いや、嘘だろそれ。」
「嘘など吐いておらぬ。我にとっては造作もないことよ。」
元親にはとても信じられない。
「じゃあ証明してみせろよ。」
「構わぬが…普通に名を呼んでも貴様は満足せぬであろう。あれで証明してみせよう。」
「あれ?」
首を捻った元親に元就は薄く笑んだ。
「"籠目籠目"ぞ。」
こうして毛利とその部下が籠目籠目をしているというシュールな図が出来上がったのである。
元就が提案してきたからどんな事かと思ったが、これなら顔を見られない分難しくなる。
(できるわけがねぇ)
元親は心の中で繰り返した。
「鶴と亀が滑った…」
歌は着々と進んで行く。
そしてついに。
「後ろの正面だーあれ?」
(できるわけがねぇ…)
知らず知らずのうちに元親は手を固く結んでいた。
元就の部下も緊張した面持ちである。
ただ一人、元就だけが落ち着いている。
「貴様の名は…」
ごくり、と誰かの喉が鳴る音が聴こえるほどの静寂。
「貴様の名は、"我が捨て駒"ぞ。」
…
……
………
「はぁ!?」
「お見事でございます、流石元就様!!」
呆けたような元親の声と、嬉しそうな元就の部下の声が重なる。
「おいおい、何言ってんだよ!?お前捨て駒なんて名前じゃねぇだろ!?だいた「何を言うか、長宗我部。」
生真面目な顔をした元就が元親の言葉を遮る。
「我が捨て駒には我が軍に入りし折にこの名を下賜しておる。」
「は!?」
「故に此度の遊戯、どう転んだとしても我の策のうちよ。」
「え!?」
「流石にございます、元就様!!」
「ふん。」
嬉しそうな部下と、得意気な元就。
もしかしたら俺がおかしいのかもしれない、と思ってしまった元親であった。
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ギャグってなんだっけ。
そもそも籠目籠目って江戸時代以降の発祥らしい。