バンッ バンッ 

 ここは火影の執務室。
 窓の外が薄っすらと暗くなりかけている室内に、先程から軽快なリズムで大きな音が響いている。

「綱手さま…もう少し丁寧に……」

 トントンを抱き抱えたシズネが控えめに声をかけるが、綱手はそんな言葉など全く耳を貸す気はないらしく、鼻歌を歌いながら机の上の書類に次々に力強く判子を押していく。

―― まぁ、仕方ないですかね

 シズネは諦めの嘆息を小さく溢した。

 一昨日から綱手は今日を楽しみにしていた。正確には今日の夜なのだが。先程から綱手が作業の合間にチラチラと視線を送る壁にシズネも視線を向けた。

 壁には3月28日の日付を示す日捲り。その横に掛けられた時計の針が間もなく6時を指そうとしていた。

 シズネは抱いていたトントンを床へと静かに降ろし、次々に判が押されていく書類を手際よくファイルへと収めていく。

 と、その時。


ババンッ! ガタガタッ
 一際大きな音が響き渡り、シズネと机の前に居たトントンがビクリと体を震わせた。

 時計が6時を指した瞬間、綱手が机を叩きつけて立ち上がったのだった。


「よーーーしっ!シズネーー!サクラを呼べっ!」


 威勢の良い綱手の声が執務室に響いた。




 ちょうどその頃、
 ナルトは五日間の砂の国での任務を終え、木の葉の里へ向けて走っていた。この森を抜ければ、木の葉の里はすぐだ。

 ナルトは空を見上げた。

「あ〜。やっぱ、間にあわなかったか……」

 木々の間から見える暮れなずんでいく空の色を確認して、はぁ、と溜息を溢した。
 背負っているリュックの肩ひもに結びつけた小さな袋にそっと触れた。ちょうどナルトの心臓の上で揺れる袋を包み込むようにやんわりと握って、里へと向かう足の速度を上げた。





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