ウケの条件


 無音の空間に、しーん、という音の無い音が響き渡る。


「突然何言ってんの?お前」


 ようやくと言った感じにカカシが声を絞り出す。


「や。オレさぁこの間、遅刻癖のあるヤツと改造されたヤツはウケだって聞いたんだってばよ」

「…………」


 再び しーん という無音の音が響く中、ナルトは隣で石化しかけているカカシにはお構いなしに話を続けた。


「でさぁ、カカシ先生遅刻ばっかするし、改造(写輪眼)されてっしよー。先生ってばその条件にズッポシじゃねぇ?」


 頭の後ろで手を組んだナルトが、いつものようにニカッと爽やかに笑いながら言った。その、特別深い意味など何も含んでいないような物言いに、カカシは脱力感に襲われた。


「お前ねぇ……」

 はぁ。カカシは左手で顔を覆い肩を落としながら溜息をつくと、視線を持ちあげて指の間からナルトをじっと見た。
 カカシの視線に気づいたナルトはニコニコ笑顔のままでほんの少し首を傾げている。


「……知りたいの?」
「ほえっ?なにが??」

 ボソリと低く呟かれたカカシの声にナルトはきょとんとした顔になった。


「教えてやろうか?」



指の隙間から見えるカカシの目が妖しく微笑んだ。


―― ゾ ワ リッ


「は、ははっ。し、知らなくて、いい……かなぁ?」


 ただならぬ空気を感じたナルトの表情がヒクリと引きつった。
 思わず後ずさりしたナルトにカカシは妖しい笑みを浮かべたままにじり寄る。


「まぁ、遠慮しなさんなって。言い出したのはお前でしょ」
「え、やっ、ちょっ、っっうわっっっ」


 ドサリと倒れこむ音を残して、二人の姿が消えた。



 

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