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強い決心



「土方さん。ごめんね、名前さんを送ってもらって」
「あァ。……つーか、でも、あの子強いな」


もっと喚き散らすとか、泣くのかと思ってた。と煙草を吸いながら俺は呟いた。横へ柔らかな物腰で坪倉が座った。


「大切な方を亡くされた直後は、直ぐにショックを受けられないのよ。現実を受け入れていない。と言うのかな。名前さんは先程からぼうっとしてたし」
「それでも、あんなに笑えるもんか」
「名前さんは特別強い子なのかな。だけど、我慢していたあの枷が外れた時は、とても危険だと思うよ。お母さん達の後を追って自殺することも有り得ないことではないし」


坪倉の言葉に、あの子が自殺?と首を傾げる。

俺も生まれて直ぐに両親を亡くしたが、幼き頃に失った俺と名字さんの心情は分からないでもない。いっぺんに大切な人を三人も失ったんですよ、嫌いな人の手によって。と、坪倉が悲しげに言った。確かに、大切な人をいきなり何人も失うということはとてもじゃない程悲しく、虚しいものだろう。後を追うという考えもしてしまうかも知れない。だが、昨日彼女に会って俺は驚いた。あんなにも上手い笑顔で軽口を叩けるとは思ってもいなかったからだ。しっかり話せるし、お礼もちゃんと言える。あの子が両親の後を追って自殺することは想像できなかった。


「私も精一杯あの子のケアをするので、土方さんも明日宜しくお願いします。あの子がもし泣き崩れたら、抱き締めてあげてください」
「あ、あァ」
「では、私は帰ります。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」


坪倉は鞄を抱えると帰って行った。自身の吸っているタバコの匂いが、今朝嗅いだ匂いと重なって、憂鬱な気分になった。


「はぁ」


溜息を零しながら、灰皿に煙草を擦り付ける。あの子は死なせてはいけない。あの笑顔を失わせるものか。と俺は強く決心した。




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