×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

二話『返済求ム』


「だーかーら、中山さんあの店に借金作ってんだろ?好い加減返して貰わねぇとこっちも困るんだッて」
『そうですよ中山さん。それにリカちゃんって子にいきなり本番やっちゃったんでしょう?あの店本番無しって分かってなかった?』

午後三時。名前と借金の取立て屋、田中トムは池袋にあるソープランドの事務室に居た。壁に背中をくっつけ、泣きながら怯えているのは中山という男。彼は店のソープ嬢に無理やり本番を強要したのだ。そのおかげで、店の裏を仕切っている名前が今日仕方なく動くハメになった。

『あー……多分トムさん。これじゃキリないですね。今から中山さんの親の所押しかけて借金返して貰いますか。』
「ッはあ!?やめ、それは止めてくれ!…お、親には迷惑かけたくないんだ」

ようやく声を出したかと思えば、またしゅんと縮こまって俯き始める中山。田中は呆れるようにはあ、と溜息を吐くと、名前の肩にポンと手を置いた。

「俺一旦帰るわ。静雄連れてくる」
『…はは、トムさん。それ結構良い案ですけど店壊れるかもしれないんで、すいませんが外でやって貰えませんか?』
「あー…そうだな。悪ぃ。明日またコイツんとこ行く時に静雄連れてくわ。じゃあな」
『はい。トムさんまた』

田中が店から居なくなったのを確認すると、怯える中山に視線を合わせるように、名前も腰を下ろして屈んだ。彼女はにっこり微笑みながら、中山の目を凝視しながら話す。

『中山さん。うちの店の子傷つけられたらコッチも困るんですよ。店のルール分かってます?』
「…ぁ、すいませ、ん」
『すいませんじゃなくて。先っちょなら良いと思ったんですか?いやいや、もうソレ入ってるんですよ。ルール違反になってるんですよ』
「…ッ、本当にすいません」
『あの、悪いと思ってます?』
「…は、はい!本当にす、すいませんでした!」

勢いよく彼は抵抗なく土下座をしてみせた。名前はその姿を見ても顔の表情を崩さない。

『ならいいや。とりあえず百万払って下さいね』
「えっ…ひゃ、百万!?」
『うん。うちは高級店だからさ。すいませんね、高くて』
「百万なんて…も、持ってません」
『うん?いや、今じゃないですよ。期限までに払っていただければ。あぁでも、この紙に目ぇ通してサインして貰えます?』
「…分かりました」
『うん、どうも』

名前は机に置いてあった紙とボールペンを手にすると、中山の方へ振り返った。だが、そこには彼の姿化はない。

『ん?』
「ーーッ!」

気付いたときに彼は部屋から抜け出し、幅広い受付けコーナーまで逃げていた。店員が止めようとしたとき、名前は動いた。中山の頭上に灰皿を投げつけた。それは壁に鈍い音を立てて当たり、彼はその音に驚き思わず足を止めてしまう。
後ろから足の付け根を思い切り蹴れば、彼は呻き声をあげて倒れた。

『逃げちゃ駄目ですって!暫く立てなくしてもいいんですよ』
「す、す、すいませ、本当にすいませッ…!」
『いやいや、それさっきも聞いた』

中山の上へ跨ると、転がっていた灰皿を手にし、思い切り彼の頭へと構えた。が、頭から僅か五センチのところで動きを止めてヘラリと笑った。


prevbacknext