※早速喧嘩シーン
「…。なんでお前怒ってるの?」 『…っべ、別に怒ってなんか…!わ、私はただ臨也が心配で…!』
はァあ。大きく苛立った様子のため息を吐かれた。 もやもやと苛立ちや悲しみに似たような感情が溢れ出てくる。悲しみの方が強いかな。どうしようもなく悔しくて、呆れたような顔をした臨也を見たくなくて、見たら泣いちゃいそうで、不貞腐れたように私は下を向いた。
「……チッ、お前さあ。前から思ってたけど、俺のこと心配だとか言って束縛すんの止めてくれない?正直鬱陶しいんだけど」 『束縛なんてしてない…!』
ダメだ、泣いちゃいそう。臨也、もう黙ってて。
「してるじゃん。今だってまともに顔合わせてくれないしさ。恋人同士が大事な話してるのに下向いてるってどういうワケ?」 『…っ』 「…チッ」
臨也が舌打ちをする度に、怖くて体がビクリと震えた。
終わりたくないけど、もう終わってしまう感じ。本当は怒ってなんかいないのに。向き合って話したいのに。彼の顔を見るのが怖くて、体が中々動かない。
「…めんどくさい女」 『…っ!』
冷えきった低い声で臨也はそう言った。
ああ、言われると思った。だって私実際にめんどくさい女だしね。でもそう思われたくなくてずっと頑張ってきたのに。臨也を怒らせたくなくて、常に機嫌を伺って色んなこと我慢してきたのに。こんなに、頑張ってきたのに。
悶々と想いが溢れてきて、ついには涙がポタリと溢れた。小雨のように、ポタリポタリと床に涙の跡をつけていく。前までは心配して泣くなって言ってくれたけど、流石にもう言ってくれないよね。言ってくれるわけないよね。でも謝れば、私がここで謝れば、臨也は許してくれるかもしれない。ひねくれていても、優しい彼だから、きっとーー…。
『い、臨也…ごめんなさ、』 「別れよう」
ーー…。
時計が止まったように、世界から時間というものが無くなったように。私は固まって臨也の顔を見た。ようやく見れた彼の顔は初めて見るほどの冷めた顔。私のこと何も思ってないような、無感情とも思われるほどの冷酷非情な顔。 喉が詰まったように声が出なくて、泣きながら臨也の顔を見ることしかできない。ダメだ、泣いちゃダメだ。めんどくさい女だって、また思われてしまう。
「もう俺達これ以上長く続きそうもないし、終わりにしようか」 『…嫌だ、ごめんなさい、悪い所ちゃんと直すから…もう泣かないから…。だから、嫌いにならないで…!』
ああ、出た出た気持ち悪い自分。彼が嫌いなめんどくさい自分。こんなこと言おうとなんて思ってないのに、自然に口から想いが出てしまう。自分の胸に秘めていた、嫌われたくないという感情。彼の笑顔がまた見たいという夢にもみた無謀な感情。
「…もう無理。終わり」 『そんな…!ま、待って臨也、もう一度しっかり話をーー』 「名前」
私の名前だ。名前を久しぶりにしっかりと呼ばれ、私は思わず喋るのを止めた。そして彼の口から告げられた最後の言葉。
「今までありがとう。…じゃあね」 『い、臨也…』
私に背を向けて臨也は去っていく。
言われた現状に納得できなくて、その場で私はただ泣き崩れる。
終わりなんて来るとは思ってなかった。二人一緒に笑っていれればそれで良いと思ってた。 でも、それは私だけだったんだね。
『…ごめんなさい』
どうしたら、彼は私の元へ戻ってくれますか?
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