微熱より暑く ナツガジ【微裏】



※微裏注意



吸い込んだ空気が噎せ返るほど熱かった。
気休めに開いているだけの窓からは生暖かい風が入ってくるだけ。
情事後の酷く強い怠慢感と肌を濡らす汗がさらに不快度指数を上げる。
熱中症になるんじゃないかと思うほど暑いのに、自分に跨がる男は愛おしそうに火照った頬を撫でた。
塩辛い手のひらに唇を寄せれば、男は、ナツは汗を滴らせながら微笑む。

「スゲー汗。何か飲む?」
「飲むよりアイス食いたい…」
「アイスな、ちょっと待ってて」

今日何度目か分からない口づけを交わし、ナツはトランクスだけ穿いて寝室を後にした。

夏だから汗をかこう、なんてナツが言い出したのが始まりだった。
拒否はしたもののそれはお約束の一部にすぎない。
結局流されるままに体を重ねてしまった。

頭がぼぉっとする。
この暑さとナツの容赦ない行為によく意識を飛ばさなかったものだ。
ガジルものそりと起き上がり、痛む身体に鞭を打ってシャツを羽織った。
下着はベッドから一番遠い所に投げられている。
取りに行くのが億劫すぎる。
滴る汗をしわくちゃになったシーツで拭って一息ついた。
そこで扉が再び開き、アイスキャンディーを二本持ったナツが入ってきて、寝室の暑さに顔を歪める。

「うげ…すげぇ暑い…」
「クーラーも何もつけてないからだろ」
「夏つったら汗をかくもんだろ?これは暑すぎるような気がするけど…」
「だろうな。で、アイスは?溶けちまうから早く寄越せ」

暑い、喉が渇いた、早く何か補給したい。
それから早くシャワーも浴びたい。
ぐい、と額に滲む汗を拭うナツからアイスキャンディーを受け取り、齧り付いた。
爽やかなりんご味が瞬時に口の中で溶けて消えていく。
少しだけ、本当に少しだけ、涼しくなったような気がした。

「ガジル、そっち何味?」
「りんご。そっちは何だ?」
「オレンジ。なぁ、少し食っていい?こっちもやるから」

既に溶けてきているアイスキャンディーを舐めて特に何も思わずに頷いた。
ほらよ、と差し出したアイスキャンディーにナツが齧り付く。
その時に真っ赤な舌が見えて不覚にもドキっとしてしまった。
ナツはそんなガジルの変化に気づいていないのか、りんご味を堪能して頬を緩める。
何を意識しているのだろうか。
頬が暑さとは違う意味で熱くなって自己嫌悪。

「ほら、ガジル」
「ん」
「あ、タンマ、こっちがいいか」

差し出されたアイスキャンディーが引っ込み、小首を傾げるガジルに、ナツは笑みを浮かべる。
そして一口齧り、ガジルの腕を引いた。
へ、と間抜けな声が上がった直後、冷たい塊が、舌と一緒に口内に入り込んだ。
瞬時に身体が強張るが、優しく舌を絡められ、ガジルは大人しく瞳を閉じて受け入れる。
オレンジ味のアイスキャンディーはすぐに溶けてなくなったが、キスは止まらない。
二人が持つアイスキャンディーが遂に溶けてシーツに落ちたが気にする余裕はなかった。
熱い、熱いキスに、再び頭がぼぉっとしてきた。

「っな、つ…」

酷く弱々しい声。
その呼びかけに応えるようにナツは一旦唇を離し、息を吐く唇にリップ音を立ててキスを一つして、額を合わせた。

「アイスがダメになっちまったな」
「狙ってたんだろ、お前」
「本当はミルク系が好ましかったけど」
「もっとベタベタするからイヤだ。つーか変な事考えてんだろ」
「ん、まぁな」

否定しないのかよ。
アイスキャンディーの棒を取り上げたナツは近くのゴミ箱に投げ入れて再び唇を重ねる。
キスしすぎて赤くなるんじゃないか、とちょっとした不安が過った。
でも、どうせこのまましばらくは家から出してもらえないだろうから、気にする必要はないか。
そしたらまたアイスを貰おう。
今度はちゃんとオレンジ味が食べたい。
ぼふんっと、乱れたシーツの上に押し倒され、ナツはガジルを見下ろして唇を舐めた。

「休憩終わり。始めようぜ、ガジル」
「シャワー浴びてぇのに…」
「これが終わったら一緒に入ってやるって。後、シーツも変えなきゃな」

熱い手がシャツにかかる。
こいつ、人の話聞いてないな。
それでも近づいてきたナツの顔に瞳を閉じて、少し荒っぽいキスを受け入れた。










「で、熱中症になったって訳か」

ぐでん、と力なく項垂れたガジルは、シャツを着たまま水を張った浴槽に浸かり、小さく頷いた。
傍らで鉄を冷やすグレイは、それはそれは大きなため息を吐いた。
ナツから「グレイ、ガジルが倒れた!!」と言われて来てみたら、コレだ。
熱に耐性のあるナツはともかく、どちらかと言えばグレイのように低体温に近いガジルには、あの暑さは耐えられない。
なのにナツが…と言う訳で、ガジルは現在軽い熱中症。
事の経緯を聞いたグレイがナツをぶん殴ったのは言うまでもない。

「とりあえず、水分補給はしっかりしろよな」
「…鉄」
「話聞いてたか?」

ひんやりと冷やされた鉄を手渡し、グレイは再びため息を吐いた。
ガジ…ガジ…といつもより勢いのない音だがしっかりと鉄は食べられるらしい。
そんなガジルの頭を冷気を纏った手で撫でつつ、口を開く。

「………おいガジル」
「んだよ」
「お互い盛るのはいいけどな、俺に迷惑かけんな。わかったか?」
「っげほ、げほ…!!さ、盛った訳じゃ、な、なくも、ない…」

噎せて顔を真っ赤にするガジルの語尾が小さくなっていく。
ノロケんなよな、と思いつつ、羞恥に唸るガジルをぐりぐりと撫でてやった。

「…グレイ、そう言えば火竜は?」

ナツが外の木に吊るされていると知るのは、もう少し後の話。



E N D



第一位ナツガジ
遂にナツの一人勝ちが…!!誰が一番喜んだって、私かもしれません。ナツ、おめでとう!!
なのにオチがいつもの可哀想なナツでごめんなさい!!前半はエロチックなナツガジで頑張ったのに…反動でこんな可哀想なナツになったと思われます。
あ、とりあえずナツの家でにゃんにゃんしてます。街から離れてるから邪魔が入りにk(強制終了)
沢山の投票ありがとうございました!!


飛鳥




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