「いもこん。傘入れて」
「その呼び方変えてくれたら良いですよ」

下校時間の15:45。空はどんより雨模様の土砂降りで私は生憎傘を持っておりません。だって朝は曇りだったから。行けるだろっと思ったのに。私が傘を持ってくると大概雨は降らなかったりする。

「だってさぁいもこん。私心が清いから流石にビニ傘をパクったりなんて出来ないのよ」
「誰の心が清いって?」
「だから私の」
「失笑だ」

真顔で吐き捨てて一人で傘を広げて帰る彼は正に毒妹子。
あぁ、あぁ。もうあんな所まで歩みを進めちゃったよ。

「いーもーこーんー!薄情ものー!」
「恥ずかしいから黙れ馬鹿!」
「だってだっていもこんが入れてくれんからー」
「牛山さんとか他の人がいるでしょう」
「やだー。いもこんがいい」
「それは告白と捉えていいですか」
「調子のんなハゲっ」

って言ったらとうとう妹子は校門を抜けてしまった。あーやってしまった。私の馬鹿。
それでもこんな雨の中帰りたくないから弱まるまでぼうっと立っていたら見たれた茶色い猫っ毛が戻ってきた。

「ほら、300円下さい」
「ビニ傘で300円とか高いよ。普通100円だよ」
「そこのコンビニで買ったんだから文句言うな。嫌なら一緒に入りますか」
「ハゲなんて言ってごめんね妹子」


「その言葉が聞きたかった」



101019

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