※BL要素あり 鳴っている。 「起きました?」 頭の中でこだまする音に半ば引っ張られる形で目を開けると、一つ飛ばして隣りにいる片割れが声をかけてきた。うん、と返しながら顔をそっちへ向ければ飲みかけのペットボトルを渡される。半身起して口にしたらぬるまっていたけれど、渇いた喉には充分だった。 「いまなんじ?」 「3時過ぎです。貴方達、毎度のことながら終わると直ぐ寝ますね」 「そりゃあ動いてるからつかれるし、今日なんか仕事いっぱいした。ねむくなるに決まってる」 「わたくしはもう少し、後戯も楽しみたいです」 そうぼやいたノボリの手が、真ん中で眠っているなまえのほっぺを撫でる。優しくやさしく、慈しみを込めた手つきでほっぺから首、鎖骨、胸へ辿っていく。 「おきちゃうよ」 「起こすんですよ」 ぼくも大概だけど、ノボリも中々自分本位なニンゲンだ。さっきまでぼくら二人に揺さぶられ喘いで苦痛と快楽に顔を歪ませていた女の子にまた無理をさせる気でいる。勝手にやってなよ、と布団に潜り込もうとしたら右手を取られそのままなまえの左胸へと誘導される。 「クダリも」 音がする。甲高い音が。何もない真っ白な部屋で延々と響き渡っているかのような。 口の端は下げたまま、下まぶたをかすかに上げている兄はぼくの手を離さずなまえの右胸に口を付ける。かくいうぼくはしょうがないからまた半身を起こして、ノボリの望む通りになまえの左胸を手のひらでゆっくりと擦る。身をよじりながら眠りの浅いなまえの口が開いた。 「盛ってる」 「ごめんねなまえ。ぼくは止めたんだよ」 「いいじゃありませんか。久方ぶりなんですし」 眠気まなこななまえの両腕を引っぱって胡座をかいたぼくの上へ座らせる。ぼくを挟むように後ろからノボリがなまえの頭を撫でるから、脳内にまた甲高い音が鳴り響くんだ。 ぼくとノボリとなまえ、三人揃うとぼくの頭の中で音がする。水の入ったグラスを叩いたような、澄んだ音。ずうっと聞いていたいような、聞き続けていたら気が狂ってしまいそうな。耳鳴りの一種なんだろうか、なんて、あんまり深く考えたことなんてないんだけど。 頭を撫でていたノボリの手はいつの間にか両胸を押しあげるように揉みしだいていたから、すっかりとろけた顔になったなまえの膣に指を忍ばせる。寝る前散々やったから中はまだぐちょぐちょで後ろの穴も比較的すんなりと指を受け入れた。 「もう挿れたいでしょう、なまえ。ご自分でクダリの挿れられますね?」 ノボリの促しになまえは恥じらう様子もなくぼくのものを掴んで腰を落とす。漏れた吐息が表情と同じように悦楽に満ちていて、あーあ誰がなまえをこんなにしちゃったのかななんて他人事みたいに思った。 「なまえ、ノボリにおねだりして。お尻の穴にも入れてって」 「……ノボリ、こっちにも挿れて?」 それはもう気持ち良さそうに腰を揺らしているなまえは再び寝転がったぼくに身体を預け、お尻を高く上げながら十分に熟れた肛門を指で広げ懇願する。最初の頃はおねだりどころか両方に挿れるなんて信じられないって顔してたのに。気持ちでしょなまえ。三人でするってとっても気持ちいいの。 「ああ、なまえ!クダリのだけでは飽き足らずそんなにヒクつかせて。今の貴女、とてもいやらしい顔をしていらっしゃいますよ。もちろん、貴女が満足するまで沢山突いてさしあげます」 心底楽しそうな顔でなまえの腰を撫でると、ノボリのものがずぶずぶと中に沈む。少し膣が圧迫されて感度が増す。焦点の合っていない目で嬌声を上げて大きすぎる快感から逃れるように、ぼくの首筋に顔を埋めるなまえの息遣いが相変わらず鳴り響く音と相まって脳に絡む。 「ノボリ」 手を伸ばしてノボリの唇に触れると、舌を出した顔が近づいてくる。それに気づいたなまえが少し横にずれて左を向いて同じように舌を出す。出した舌が絡み合って熱を孕んでとろけていく。正直、セックスよりもこっちの方が好きだったりして。脳に近い分快感が強い気がするんだもん。ああ、下も上も繋がる。境目が分からなくなる。音が強くなる。何度も何度も鳴り響く。そうか、これは祝福の音なんだ。だって今この瞬間、ぼくらが世界一しあわせに違いない。ねぇ、そうだよね? (なんで二人には聞こえてないんだろう) ぼくの上で揺れる二人を見て出かかった言葉は世界に穢される前に飲み込んだ。 ああ今日も、ぼくらだけの音がする。 150603 企画Triangle提出 |