人間は時間が余るといらないことばかり考える。

後ろから私の身体を弄っていた彼の手は、腹から胸、鎖骨をなぞって首筋にたどり着いた。かと思えば首筋に埋められていた顔は離れていき、うなじにざらりと生温い感触が走って思わず舐められた所を手で覆う。

「何だ」
「こっちの台詞ですよ」
「お前は人間だろ?」
「…兵長、何考えてるんです」
「下らねえことだ」

また身体を引き寄せられ、髪をかき分けうなじを舐められる。べろり。身震いするのも許さないと言わんばかりの力で抱きかかえられれば抵抗する気だって失せてしまう。時折あたる歯の感触が凄く怖い。もしかしたら、このまま食い千切られてしまうのではないか。

「へいちょ、それ、いや、です」
「しゃんと喋ろ。ガキじゃあるまいし」
「ふ、普段、散々人のこと、ガキ呼ばわりするくせ、やっ」
「…ガキはそんな色気付いた声出さねぇだろ」

伸びた手が下腹部をぎゅうぎゅうと刺激するから、簡単な私の身体はあっと言う間に出来上がって頭に熱が篭って動きが鈍る。何も考えられない。後ろにいる彼は、何を考えているのか。顔が見えないだけでこうも不安定になる。相変わらず舐め続けられているうなじは、少し息がかかっただけで全身を硬直させるようになった。

「も、本当に、いい加減にしないと殺しますよ」
「いいぞ」
「…は、」
「巨人に喰われて死ぬより、何かのきっかけで俺が巨人になって削がれて死ぬより、お前に舌噛み切られて死んだ方が幸せに決まってるだろ」
「…嘘つき」
「……」
「そんなこと、微塵も思ってないくせに」

何の役にも立たないまま死ぬことを誰よりも望んでないくせに。そのくせ誰よりも、人間としての幸せを望んでいるだなんて。

「下らねえな」

蜘蛛の巣みたいな思考を張り巡らせるのはやめてください。

130517

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