透き通るように白い肌。
すらりと伸びた長い手足。
腰まである艶やかな黒い髪。



「…そう、それでね」


笑った顔はまるで女神のよう。

勉強もできて、運動神経も抜群。
だけどそれを全く鼻に掛けない、謙虚な性格。

才色兼備とは、まさに彼女のような人のことを言うのだろう。


「今日の放課後、告白しようかなって…」



だからその言葉を聞いた瞬間に、私の不戦敗が確定したのだった。



「ほんとに!?遂にだね!」

「で、でも、付き合えるかはまだわからないけど…」

「リナリーなら絶対大丈夫だって!親友の私が保証する」



ぐっと、親指を突き立ててみれば、リナリーは照れくさそうに笑った。

それにしても、自分でもびっくりするくらいに諦めがつくのが早い。寧ろすっぱりと気持ちに区切りがついて清々しささえ感じた。



「結果はどうあれ、なまえには必ず報告するね」

「うん、待ってる!」



この笑顔は心からのもの。

まさかリナリーも彼のことが好きだったなんて、最初聞いたときは驚いたけれど、今となっては当たり前のようなことにも感じられる。

彼とリナリーは幼馴染だし、周囲に冷やかされるうちにお互いのことを意識し合っていつしか恋になっても不思議じゃない。

彼もまた勉強も運動もできるクラスの人気者的存在。美男美女でとってもお似合いのカップルだ。



“なまえ〜♪今日は話聞いてくれてありがとう!おかげで無事付き合うことになりました!”



その夜、早速リナリーから連絡がきて、昼間言っていた告白が成功したことを知った。



“そっか、良かったね!おめでとう!”

“なまえが大丈夫って言ってくれなかったら勇気出なかったよ〜(><;)ほんとにありがとね!”



そもそも心配などしていなかったけれど、その幸せいっぱいの文面を読んで、もう彼は親友のものなんだということを実感した。

と、同時に、昼間はなんともなかったはずの左胸がずきりと痛んだ。

なんだなんだ、どうしたんだ私の心。

つつつ…と、頬を流れた熱にはっとした。
それをきっかけに、自分でも気付かないうちにぼろぼろと両の目から涙の粒が溢れて止まらなくなった。

ずきんずきん。心が重い、痛い。



「っく、うう…」



枕に顔を押し付けて、泣いた。

止めどなく流れる涙と一緒に、閉じ込めていた感情が一気に溢れ出した。

そっか、私はやっぱり彼のことを諦めてはいなかったんだ。
敵わない相手を前に、立ち向かう勇気がなかっただけ。
自分の気持ちを殺してまで親友の幸せを心から祝えるほど、私は自己犠牲的じゃない。
私だって、彼に好きと伝えたい。
この気持ちを忘れるまで隠し続けて、親友の恋人として付き合っていくには酷すぎる。
たとえ叶わないとわかっていても、彼に告(い)わなければ、いつまでもずるずると中途半端に辛い思い引き摺るだけだ。

…明日、告おう。

そう心に決めたら、少しだけ胸が軽くなった気がした。


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