ダダンダダンダダン、と華麗なドリブルさばきでボールをゴールへと運んでゆくのは、目立つ赤色の髪だった。 「よっしゃ」 放ったボールは宙に見事な弧を描いて、ポスッと小気味いい音を立ててスリーポイントシュートが決まった。 そこでタイミングよくブザーが鳴って試合終了。 その瞬間、周りからはどっと歓声が上がった。 特に女の子たちの黄色い声といったら、耳が劈くほどに体育館じゅうにきらきら響いていた。 「やばい、ラビ先輩かっこよすぎ」 「せんぱーいっ!」 「きゃー!目、合っちゃった」 うるさいなぁ、なんて思ってても言えないけど、騒ぐ女の子たちが鬱陶しかった。 いや、それよりも、そんな女の子たちの声援にへらへらと手を振り返している赤毛の幼馴染みが嫌なのかもしれない。 得意の笑顔でかっこよくポーズを決めて、わざとバンダナ下ろしてタオルで拭って、ほんと馬鹿みたい。 いわゆる、ファンサービスのつもりなんだろう。 その思惑通り、女の子たちの黄色い声はより一層高く高く体育館に響き渡っていた。 「…何、あいつ」 見に来いって言ってたからわざわざ放課後残ってまで来てやったのに、これじゃあまともに見ていられない。 帰ろうと引き下がれば、空いた隙間に女の子たちの壁が押し寄せて来て、あっという間に得意気な赤色の姿は見えなくなった。 やれやれ、人気者はいい気なもんだ。 あの様子だと、女の子には困らないんだろうな。 変態スケベ野郎のくせに。 「あ、あの…」 「ん、何?」 歩き出したわたしを呼び止めたのは、小柄で可愛らしい女の子。 「みょうじ先輩って、ラビ先輩と仲いいですよね」 「別に、ただの幼馴染みだし」 「じゃ、じゃあ…」 「お生憎様、付き合ってないから安心しなよ」 もごもごと躊躇いがちに聞いて来るこの後輩は、つっけんどんな態度のわたしなんかより遥かに可愛いだろう。 これで何度目かという受け答えに、さすがに嫌気が刺してきた。 「で、なんか用?」 「あ、ごめんなさい。あの…できたらこれ、渡してくれませんか?ラビ先輩に」 ずいっと差し出されたのは、桜色のこれまた可愛らしい封筒。 成る程ね。 これで六通目だよ、モテ男くん。 「おこがましいとは思ったんですけど…」 「いいよ、渡しとく」 「あ、ありがとうございますっ!」 渡したいなら直接渡せば、そう思っても言えない。 もしもそんなところを他の女の子に見られたならば、きっと次の日にはその子の机がなくなっているだろう。 なぜわたしが平穏な学校生活を遅れるのかといえば、どうやらわたしはラビにとっての恋愛対象でないと思われているからなんだとか。 「で、どんな子だったさ?」 次の日、桜色の封筒を受け取ったラビは、間髪入れず訊いてきた。 「ちっさくて、可愛い子だったよ。胸も意外とあったし」 素直な感想を述べれば、いとも簡単にその子のストライクが決定した。 やっぱり、わたしの中のラビはいつまで立っても馬鹿で単純な発情兎だ。 「どうすんの?返事」 「んー、付き合ってみっかな」 「うわ最低」 「振るのも結構しんどいんだぜ?」 「じゃあ、いっそ私と付き合って口実作れば」 「それ、本気さ?」 ぴたりと空気が一転、真剣な顔して訊いてきたラビに居心地が悪くなった。 「いや、冗談だけど」 「何だよー、びびったさぁ」 いやいや、びびったのはこっちだから。 てか、びびったって何? 冗談で良かったってこと? 「あのさ、なまえ」 「何」 「オレがもし付き合ったらどう思う?」 「知らない」 「やっぱあの子と付き合ってみっかな、もろタイプだし」 「好きにすれば」 「なら、付き合う」 「あっそ」 「明日告う」 「…やっぱやだ」 「何でさ?」 「なんとなく」 意味わかんねーなんて言ってるけど、ほんとはきっと気づいてんだ。 きっとラビも私と同じ。 今さらそんなこと面と向かって言うなんて、罰ゲームみたいなもん。 だけど、無言でじっと見つめられること三秒。 不意に奪われた唇に、すべての想いが伝わった。 なかなか言えなくて (口にしたら負けな気がした) 130127 なにこれ、ごめんなさい。加筆修正そのうちします。 |