できることなら、このまま一生を終えてもいいかもしれない。

そんなことを思いながらこたつで横になり、意味もなくチャンネルを回す。
どの局も特番ばかりで、結野アナはいつもより豪華な和装姿で朝からそそられた。

ああ、そっか。
そういや今日は正月だったな。

しかし、それらしき雰囲気はまるでない。
炊事役の新八が神楽とともに志村家に帰省しているから仕方ないか。

テレビではちょうどグルメリポートの真っ最中で、恰幅のいいリポーターが蟹を頬張るところで俺の胃袋が鳴いた。

ぐぎゅるるる…。

しかし、こたつから出るのも面倒臭いし、空腹のため極力体を動かしたくない。

ピンポーン。

そんな時、不意に玄関のチャイムが鳴った。
もちろん居留守だ。

ピンポーン…ピンポンピンポンピンポン!



「っせェェェェ!」



正月早々嫌がらせかコノヤロー。
こっちは餓死寸前なんだよこんちくしょう。

心の中で毒づいていたら、ぱたりとチャイムは鳴り止んだ。
代わりに引き戸が空いて、誰かが廊下を歩いてくる気配を感じた。

あれ…これはヤバくないか?



「銀時ー、あけおめー!鍵空いてたから入って来ちゃった…って、何してんの?」



ばっと襖が空いて立っていたのは、片手に風呂敷包みを持ったなまえだった。
ちなみに俺は今、もそもそとこたつに潜り込もうと身を縮めたが全身は入りきらないで頭だけ上を向いて出てしまったという中途半端な状況だ。



「つーか居るなら返事しろよ腐れ天パが」

「え、新年早々酷くない?」

「こっちは寒い中わざわざ来てやったんだよ、感謝しろ」

「…すんません」



目が合うや否や、なまえの口から辛辣な言葉が繰り出された。
口調が段々神楽に似てきた気がするのは気のせいだろうか。

ぐきゅるるる、再び腹の虫が空腹の叫び声を上げた。



「やっぱ何も食べてないんだ」

「んー」

「新八くんたち、今年も妙のとこにいるんでしょ?」



一緒に行けばよかったのに。
それは果たして、どういう意味だろう。



「妙、今年ははりきっておせち料理作ってたよ」

「あ、マジか…」



神楽と新八にはじめて心から同情した。
とりあえずあの食物兵器で殺されかけるより、空腹を我慢するほうがまだいい。



「本当に銀時って新八くんいないと何もできないよね」

「俺だって自分の食う分ぐらいなんとかできますぅ」

「どうせカップ麺とかでしょ」

「う…」

「まぁいいや、そんなことだろうと思ったよ」

「ちょ…年明けて毒舌度アップしてね?」

「てか、この部屋寒い。何で暖房ないの」

「スルーですかおい」

「ちょっと台所借りるねー。うわ、汚っ」



何かと文句をつけるなまえの後ろ姿を見ながら、空腹のお腹をさすった。

どうやら何か作ってくれるらしい。

程なくして、台所からいい匂いが漂ってきた。



「お待たせ。はい、お雑煮」

「うわ、うまそー」

「家から持ってきたの温めただけだけどね」

「でも、なまえが作ったんだろ?」

「ん、まぁ」

「いただきまーす」

「…どう?」

「俺、幸せもんだわ。これならいつでも結婚できんな」

「何それうざい。銀時なんて喉にお餅詰まらせちゃえばいいのに」

「えええ!?何で?」



けれどもなまえの頬はほんのりと赤くなり、照れているのがまるわかりだ。



「ねぇ、銀時」

「あー?」

「ん」

「何、その手」

「お年玉ぷりーず」

「結局それかィィ!」



正月
(金はねーけど、愛なら腐るほど持ってるからおいで)
(だったらいらない)
(…ぐすん)




130101
新年早々このグダグダっぷり。
毒舌なのは照れ隠し…ツンデレになるのは何故。


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