・・・有り得ない。

絶対におかしいって!


おはよう、って言っただけなのに、何でいきなりキレだすんだあいつは。


あぁ、もう・・・

思い出すだけで苛々する。



『意味わかんない!』

「まぁまぁ・・・落ち着くさ。ユウ、昨日からなんか変なんよ。オレもキレられたし」



食堂でそのことをラビに話すと、どうやらラビも同じ目に遭ったようだった。



『だよね?やっぱおかしいよね?何なのあれ』

「なまえもやっと神田の変人ぶりに気が付きましたか」



隣りで一心不乱に片っ端から大量の料理を片付けていたアレンは、満面の笑みをたたえて話に入ってくる。

アレン、なんか楽しそう・・・

目が笑ってないけど。



「なまえ、ユウになんかしたさ?」

『してない』

「酷いですねー、バ神田の八つ当たりですか」

「アレン、黒いさ・・・」

『でもほんとに酷いよ。もう絶対あんな奴と話さない!』

「ちょ、なまえ」

「あ、それ僕もやります。ぱっつん侍シカト大作戦」

「アレンさん!?」

『よし、決まり。今日から神田とは一切口きかないから!』

「っ・・・・・・なまえ、後ろ」



すると、ラビがこちらを指差して震えながら呟いた。

まさしく、身の毛もよだつような殺気を背後に感じる。

なまえはそろりそろりと振り返った。



「・・・誰があんな奴だ?」

『げ・・・神田』

「出ましたね。ぱっつん侍」

「失せろ。モヤシ」

「アレンです」

「知るか」

「いい加減覚えてくださいよ。やっぱり難しいですか?バ神田には」

「六幻、抜刀!」

「クラウン・クラウン!」



――ドッギャーン!!



「二人とも止めるさぁ!」



食堂を壊すまいと、ラビが二人を無理矢理仲裁する。



『食堂は駄目だって!』



ぽかんとその様子を見ていたなまえも、さすがに止めに入る。

神田は大きな舌打ちをして、構えていた六幻を下ろした。



「ちょっと来い」

『い゛っ・・・?』



神田はがしっとなまえの腕を掴み、そのままずかずかと食堂を後にした。



『・・・神田』



半ば引き摺るように腕を掴んで廊下を歩く神田に、なまえは怖々と声を掛ける。



『ごめん・・・怒った、よね?』



弁解しても、凛としたその背中は苛々オーラ全開で何も答えない。



『・・・腕、痛い』

「・・・。」

『・・・なんで苛々してんの?』

「・・・別に」



・・・答えになってないし。



『もう、わけわかんない!』


大声を出すとさすがの神田も一瞬面食らったようで、掴んでいた手を離した。



『そりゃ悪口言ってたのは謝るけどさ、八つ当たりなら他でやってよ!』



悪口だって、思わず口走っただけで本心じゃないけど・・・



「八つ当たりじゃねェし」

『じゃあ何?』

「お前見てると苛々すんだよ」



・・・え、私のせい?

一体、何処まで自己中なんだ。



「最近、やたらモヤシ達と一緒にいるじゃねェか」

『・・・別にいいじゃん』



だから何だというのだろう。

言いたいことがイマイチよくわからない。

神田の顔を見返すと、チッ・・・と舌打ちが聞こえた。



「・・・すげェむかつく」

『は・・・?』



そう言う横顔は少しふて腐れてて・・・

あれ、これってもしかして・・・


『・・・ヤキモチ?』

「っ、別にそんなんじゃ・・・」



うわ、耳まで真っ赤だよこの人。



『可愛いー』

「ばっ、止めろ!」



抱きついたら、目を泳がせちゃって・・・

なんだそうゆうことか。

わかりにくいな、まったく。

でも、今ならわかるよその気持ち――



『好きだよ、神田』

「当たり前だろーが」



器用なカタチ
(真っ赤な顔が何よりの証拠)



2010.09.29


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