▼ さどまぞ‐05
「なに嬉しそうな顔してるの?」
「…っ! ごめんなさぃ…!」
「お仕置きのつもりで踏んだんだけど…変態の天音にはご褒美にしかなんないか」
「ぅああっ!! あ、ぁ…っうう…!」
「ああ、ちょっとは苦しんでくれてるようだね」
楽しそうに笑いながら先生は足に体重をかけていく。
頭が割れんばかりの痛みに私はますます顔を歪めて悲鳴を上げた。
「今度から、イクときはちゃんとお願いしなきゃダメだよ。…わかった?」
「は、ぃ…っごめんなさい…っ!」
呻き混じりに叫ぶと、足の力が少しだけ弱まった。
脳内をぐわんぐわんと揺する痛みの余韻に悶えながらも私は先生の次の言葉を従順に待つ。
「…じゃあ…パンツ脱いで」
「──えっ…!?」
あまりに唐突で卑猥な指示に思わず思考が停止する。
…けれど私にためらっている猶予なんかはない。
私は言わるがまま、下着を膝の辺りまで下ろした。
「このまま、オナニーしてみせて」
「…っ…!!」
吐き捨てられたその一言に、聞き返すことすらもできず私は息を呑み込む。
下着を脱いだことで芽生えてしまった羞恥心が、瞬く間に膨張して心を覆い尽くす。
すると、そんな私の気持ちの揺らぎを見抜いているかのように先生は再び私の頭を力いっぱい床に押し付けた。
「できないの?」
「ああぁっ! や、ります…っ!」
これ以上先生を怒らせないためにも私は羞恥を無理やり掻き消しておもむろに下半身に手を伸ばして媚肉に指をうずめた。
クチュッ…と響く水音。
そこは自分でも驚くくらいに淫らな粘液に満ち溢れていた。
「んっ…ぅ、ふ…ッううぅ!」
自分の性器を弄るなんて今まで一度もしたことがなかった。
それでもなんとか先生を満足させようと、無我夢中で指を進めていく。
「もう1本指入れて。…もっと音立てて」
「っあ…! んっ、ん…ぁ、あぁっ!」
狭い穴の中に強引に2本の指をねじ入れて、愛液を掻き混ぜるように動かす。
がむしゃらに膣壁を引っ掻いている内に次第に快感の走るポイントがわかるようになってきた。
そのポイントを重点的に擦り、自ら愛液を分泌させる。
グチュグチュと、恥ずかしい水音が教室いっぱいに響き渡る。
「…そう。上手だね」
「っふあ…! あっぁ、ん…っふぅぅ!」
キュウッとヒクついた膣壁が指を締め付けた。
先生に褒められたということが引き金となって、沸き立った欲望がますます身体を敏感にさせていく。
涙やよだれで顔をグシャグシャにして、踏まれて汚い床に転がされて、その挙句オナニーまでさせられている自分はさぞかし無様で滑稽なことだろう。
…それでも先生は私を見てくれてる。
こんな虫けらみたいになった私を見て心から楽しんで興奮してくれてる。
微かに聞こえる荒っぽい吐息、唾を呑み込む音。
それらが耳に届くたび、胸の内が堪らなく疼いて熱くなった。
「あ、あっ…せんせぇ…っ! もぅイッ…イッても、いいですかっ…?」
ゾクゾクッと下腹部から背筋へと快感が突き抜けていくのを感じ、私は慌てて限界を口にする。
指に絡みついて何度も収縮を繰り返す膣内。
この衝動は、ついさっき経験した絶頂感とほとんど同じだった。
「せんせっ…あッうぅぅっ…!も、だめ…っあ、あぁ!」
…でも先生はなんの言葉も発してくれない。
涙でにじむ視線を上げると、先生は相変わらず悠然とした微笑みを浮かべていた。
『まだ我慢できるでしょ?』
そんな意地悪な声が聞こえてきそうな表情だ。
「イかせて下さぃ…っあ!んんっ…我慢、できな…っふあぁ、ああッ!」
快楽の高波に幾度となく襲われ、身体のあちこちが忙しなく跳ね上がる。
イクということを覚えたばかりで、ましてや頬や耳ではなく直接性器を触って快感を得ている今の私に絶頂を我慢することはあまりにも無理難題だった。
踏まれている頭は痛みと悦楽で蕩け、こらえ切れない欲情が涙となって溢れ出る。
「音、小さくなってる」
「だっ…だってっ、指うごかしたらっ…イッちゃうんだもん…っ!」
ダダをこねる子供みたいになりふり構わず泣き喚くと、先生は「しょうがないな」と呟いて私の頭から足をどかせた。
「いいよ、イッても」
「……っ! あっ…あぁあ!がまんできなくて…っごめんなさ、ぃ…っ!んんっふあッあ、ああぁっ!」
待ちわびた言葉をもらい、私はタガを外して欲望のままに指を突き動かす。
先生を見上げ、その優しくも冷淡な瞳に囚われながら一気に快楽の高みへと上り詰めていく。
「ふああぁっ!せんせっ…イク、イッちゃうっも…ぉっあぁッひああぁああッ!!」
身体の中枢でドクンッと荒く弾ける狂悦。
自ら導いた絶頂に意識を真っ白に呑まれ、私は突き抜けていく熱い解放感に全身をしならせて鳴き震えた。
「…んっん…く…ッはあ! はぁ…っは…ぁ、ん…っ!」
立て続けにイッたせいなのか、最初のときよりも快感の衝撃が増しているようだった。
法悦が過ぎ去っても未だ体の痙攣は止まず、クラクラと目まいが起こって目の前が回る。
…先生は、満足してくれたのかな。もう怒ってないかな?
もっと近くで表情を確かめたいのに、頭を上げることができない。
二度の絶頂を味わい、これまでの疲労も蓄積したままの体は完全に脱力しきってしまっていた。
足の先から脳天までもがビリビリと痺れてまともに指を動かすことすらもできない。
…すると、先生が私の前にしゃがみ込んで大きく上下している私の胸をトントンと優しく叩いた。
「よく頑張ったね」
「──ふゎっ!?」
突然抱き上げられたかと思うと、先生の両腕がぎゅっと私を包み込んだ。
耳に触れている胸元からドクンドクンと大きな鼓動が聞こえてくる。
「すごく可愛かったよ。イイ子イイ子」
そう言って先生は私の頭をクシャクシャに撫でまわす。
…まるで犬にでもなったような気分だ。
でもそれが嬉しくて嬉しくて、胸の奥がぎゅーっと熱くなって思わずまた泣いてしまいそうになった。
私の居場所はここ。先生の腕の中。
そんな悦びを噛み締めながら私は先生をキツく抱きしめ返した。
・・・・・
──ぴんぽんぽんぴん
校内放送の間抜けなチャイム音が鳴り渡る。
聞き覚えのある女教師の声が連絡を告げる。
職員会議を始めるから教師は職員室に集まるように、とのことだ。
「先生…」
私を抱きしめたまま動かない先生の服をクイクイと引っ張ってみる。
「…んー?」
「会議始めるって」
「…んー」
「行かないんですか?」
「…行きたくない」
「え゛っ?」
「このまま天音を連れて帰って軟禁したい…」
「えぇっ!?」
「うそうそ。…いや、ちょっと本気だけど」
そんな怪しいことをこぼしながら先生はウーンと大きく背伸びをした。
「はぁーーーっ…面倒くさいけど、働きますかぁ」
つくづく色んな意味でだらしがない教師だな、と思いながらも私は身体から離れていく先生の体温を惜しむ。
まだ体内には痛みや快感がジンジンと残ったままだ。
この感覚もすぐに消えていってしまうんだろうか。
…また、今日みたいな世界を味わうことはできるんだろうか。
「天音さん、明日もちゃんと学校来て下さいね?」
「へっ!? あ、はいっ!」
ふと寂しさに暮れてぼんやりとしていたところを先生の声に引き戻され、私は上擦った返事を返した。
「天音さんは特別、遅刻することを許しますので」
「…えっ? な、なんでっ?」
「遅刻したお仕置き、という口実で天音さんをめちゃくちゃにいたぶれるからですよ」
「……っ」
そんな朗らかな笑顔でなんてことを口にするんだこの男は。
こんな奴が教師をやってていいものなのか。
…なんて危惧しつつも、私も顔がにやけるのを抑えることができなかった。
早く学校に行った方がいっぱい先生に会えるからって、せっかく心を入れ替えて真面目に登校しようと思ってたのにな。
…まあ、明日遅刻するかしないかは、明日の私のまぞ気分次第だ。
終。
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