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▼ ディープキス

「おれ、ずっと好きだったんれす…」

「はいっ?」

飲み会の後、まだまだ飲み足りない私は後輩の宮崎くんを酔った勢いで無理やり家に引き込んだ。
ビール3本を開けた宮崎くんはいよいよ限界っぽい。
意味不明な言葉を吐くなり崩れるように私の肩にもたれかかった。


「ごめん…飲ませすぎた…大丈夫?宮崎くん」

「アケミさん…」

「ほぁいっ?!」

下の名前を呼ばれて私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
宮崎くんはいつも私をセンパイ、もしくは名字で呼ぶはず…。


「ど、どうしたの宮崎く…」

突然、視界が宮崎くんでいっぱいになる。
唇に押し当たる感触。


…こっ、これは間違いなく……っ!!



「むぁああーいっ!」

私はとっさに叫びながらその感触から逃れた。
目の前にはトロンとした目の宮崎くん。


「ごっごめんね!泥酔させちゃってごめんね!水飲むっ?!」

「好きれふ」

話しが噛み合ってないっ!


「あっ、間違ってるでしょ? あんた、酔って田中さんとか山田さんとかと私間違ってんでしょ?!」

「アケミさん…」

下の名前で呼ぶな!!

「…あっ!ちょ、や、膝の上に乗るな!待て!待……っあ…んぅ!」

再び唇に押し当たる感触。
今度は頭を手で押さえられててなかなか逃れられない。

お酒特有の変に甘い味がする…。

ああ…そういえばキスしたのなんていつぶりだっけ…。
高校以来してなかったなぁ……
って、ウットリしてる場合じゃない!

「…っみ、宮崎…っ!」

なんとか無理やり顔を背ける。
だけど宮崎くんは私を逃そうとはしない。

「なんで…っこんなこと…!」


「…っはあ…、まだ…まだ、もっと欲しい。アケミ、愛してる…っ」


不覚にもドキンと胸が高鳴る。

頭を両手でがっしり押さえられて私は完璧に逃れることができなくなってしまった。
肩を押しても宮崎くんはびくともしない。

「…ふっ…ん、んん…ぅ…!」

酸素不足でだんだん頭がぼんやりしてくる。


「…口、開けて…」

「ふ、ぁ…っ?」

突然指示されて私は思わず口をポカンと開けてしまった。すかさずそこに宮崎くんの唇が重なる。

「っんん! んーっ!」

熱くてヌルリとしたものが侵入してきて私は体を強ばらせた。
自分の舌にそれが絡むと体中がゾクリと騒ぎ立った。


「…っは…ぁ…あ、んん…っ」

ディープキスなんて生まれて初めてだった。
心臓はバクバク鼓動を早めて体はみるみる熱くなっていく。

舌が動くたび勝手に体がビクンと跳ねる。

…否定できるわけない。
私は今、宮崎くんにキスされて感じてるんだ…。

「ん…っ ん、ぅ…」

恐る恐る舌を伸ばす。
卑猥に絡む舌。
すると、宮崎くんの手が髪に差し入ってクシャリと頭を撫でられた。

…それだけで嬉しくて泣きそうになる私って一体何なんだ。


お互い口の周りが唾液だらけになったところでやっと私は解放された。


「はっ、はあっ…」

とりあえず呼吸を落ち着かせようと必死に深呼吸を繰り返す。
すると不意に股間に違和感が走った。

「…ひぁンッ!」

グッとそこを押されて私は自分のものじゃないような声を上げてしまった。
なんだこの甘ったるい声…っ。
私は慌てて口を押さえる。


「…濡れてる…。感じててくれたんだ。嬉しい」

私の下着の中に指を入れたままそう言ってなんとも穏やかに微笑む宮崎くん。

…頭が一気に発熱する。


…バッ…


「バカやろーーッ!!!」

恥ずかしさのあまり、私は無意識に宮崎くんを殴り飛ばしてしまった。
ゴン、と鈍い音を立てて宮崎くんが床に転がる。


「…はっ、あ!! ごめん、宮崎くんっ!」


慌てて駆け寄ると、なんとまあ有り得ないことに、宮崎くんは安らかな笑みを浮かべて寝息を立てていた。


「……もう…どうしろってのよ…っ」

とりあえず宮崎くんに毛布をかけて、私もそそくさとベッドに入った。


頭がグラングランする。

ああ…何やってたんだ私…っ
ああああーっ……!



…柔らかい唇
いやらしい舌の感覚
瞳を潤ませた宮崎くん
治まらない鼓動…

その晩、私が一睡もできなかったということは言うまでもない。

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