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▼ 後輩に

「いやぁっ! やめて…っあ、あぁ! お願…っ」

「嫌です」

そう言って晶はニッコリと微笑む。


…晶は私の一学年後輩で

小柄な体型に見合った中性的で愛嬌のある顔立ちで、性格も人懐っこくて可愛くて、

「市川先輩、市川先輩」と私を慕ってくれていた彼を私はまるで弟のように可愛がっていた。

…それなのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。

彼の部屋で、彼のベッドの上で両手をネクタイで縛られ、秘部を彼の指に侵されているこの状況をどうしても呑み込むことができなくて

私は困惑に歪んだ表情で目の前の猫のような大きな眼を見つめる。

「市川先輩が悪いんですよ? 勝手に彼氏なんて作るから」

「ふあぁあっ! あっ…いや…ぁあっ!」

指の腹で鋭く膣壁を突き上げられ、『どうして』という言葉の代わりに甲高い悲鳴がこぼれる。


…晶が突然豹変したのは私が『彼氏ができた』と告げた瞬間だった。

それまではいつも通り美術部でのお互いの作品を見せ合って、買ったお菓子を食べながらたわいのない雑談をしていたはずだった。

彼氏ができたと唐突に告白したのはただ、今まで散々私のことを子供っぽいとからかってきた晶のビックリする姿が見たかったから。

きっと驚きながらも『先輩を女として見てくれる人がいて良かったですね』なんて憎たらしいことを言って祝福してくれるんだろうなと思っていた。

…それなのに、どうして…っ?



「告白されてあっさりOKするなんてね。こんなことになるなら早く俺のものにしておけば良かった」

…俺の、ものっ?

信じがたい言葉に頭の中がますます混乱していく。

…と、そのとき、


──プルルルルッ

私の鞄の中から携帯の着信音が鳴り響いた。

「…先輩のですよね? 取ってあげますよ」

「やっ…!」

首を振る私を無視して晶は私の鞄を開く。

そして携帯を取り出し、画面に視線を落した瞬間、ニヤリと不穏な笑みを浮かべた。

「彼氏さんからですよ。ほら」

「……っ!」

向けられた画面と晶の冷笑を見て私は嫌な予感に背筋を凍りつかせる。

「急用かもしれないから、出た方がいいですよね?」

「やっ、やめて!…あっ…!」

想像した通りの最悪の展開に慌てて身をよじらせたけれど、すかさず携帯を無理やり耳に当てられて私は息を呑んだ。

そして少しの間を置いて「もしもし?」という声が耳に届き、心臓が痛いくらいに高鳴った。

「もっ…もしもし…? どうしたの?」

「部室に銀色の筆箱があったんだけど、市川のじゃないかなと思って」

「──っ!!」


グリッと強引に媚肉が押し広げられていく感覚が突き抜け、私はとっさに唇を噛み締める。

『お願い、やめて』と首を何度も横に振って必死に訴えかけても、晶は微笑みを一層残酷に歪めて指を突き動かしていく。


「…違った?」

「っあ! たぶん…っ私のかも…っ」

「届けに行こうか?」

「ううんっ明日で大丈夫…!」

晶の指の動きに合わせて膣口から卑猥な水音が漏れ始める。

その音が電話の向こうの彼にまで届いてしまうことを恐れて私は声を強めた。

不安や焦りに駆られて萎縮する心とは裏腹に、晶の指を求めるかのように秘部はビクビクとうねり淫らな愛液を溢れさせていく。

自分の意思に反して身体が快楽に反応してしまうのが恥ずかしくて悔しくて、固く閉ざした目に涙が滲んだ。

「…なんか声が…っていうか呼吸が荒い気がするけど、どうしたの?」

「えっ? あっ…さっきまで…っ走ってたから」

「走ってたっ?」

苦し紛れの言い訳に電話口の彼が笑い声を漏らす。

「なんでそんなことしてたの?」

「だ…ダイエット、しようかなって思って…っ」

「へぇ? そんなのする必要ないのに。ともかく体調が悪いってわけではないんだね?」

「うんっ…大丈夫…」

「そっか。ならよかった」

胸をくすぐる優しい声。

ふと彼の穏やかな笑顔が脳裏に浮かんで、胸がぎゅうっと締め付けられる。

そして『じゃあまた明日』と言葉を交わして電話が切られた。

プーップーッという通話の切れた機械音が私を責め立てるように脳内にこだまする。


「──っふぁああ!! ぃやっ…あっあ、あああ!!」

彼の声の余韻に浸っている間もなく突然下腹部に激しい衝撃が走り、私は堪らず喉を仰け反らせて嬌声を上げた。

「凄いですね、こんなに濡らすなんて」

私の恥部を、ねじ込んだ数本の指で荒々しく掻き乱しながら晶が楽しそうに私の顔を覗き込んで囁きかける。

「感じてる声を聞かれて興奮したんですか?」

「ち、がっ…あっ、あああっいやあぁああッ!!」

「先輩のここ、もうグッチャグチャですよ? 彼氏と電話してるのにこんなになるなんて、先輩って変態なんですね?」

「やっ…やああぁあっ! やめてっ、やあああっ!」

「我慢しないで今みたいな声も聞かせてあげればよかったのに」

クスクスと笑いながらそう言う晶の声は今まで聞いたことがないくらい冷ややかで、別人なんじゃないかと疑ってしまうほどだった。

そんな晶に恐怖して、私は怯えきった顔で晶を見上げる。

「も…っやめて…っ晶…!」

「その顔いいですね。そのままずっと俺を見てて下さい。イかせてあげますから」

「ひッ…!!あ、あああっいや、ああぁあッ!!」

「いきなり背けないで下さいよ。ちゃんとこっち向いて?」

これまでにない刺激が下半身に響き渡り、私は耐え切れず頭を振って身悶えた。

それを咎めるように晶が私の髪をグッと掴んで強引に顔を正面へと向けさせる。


「目の前にいるのは誰か、自分をイかせてるのは誰なのか、ちゃんとその目と体に焼き付けて下さい」

「ああッ、いや、あああ! 晶っ…も…ッああああ!!」

「もう目そらさないで下さいね?」


真っ白に溶けていく意識。

その中で、『今だけは俺だけを見て下さい』という晶のどこか悲しげな声が響き、そして消えていった。

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