短編[甘] | ナノ


▼ 秘め事‐03

「……」

「……」

ぅわあああっ 沈黙が痛い!苦しい!
テ、テレビつけようかな…。
でもつけた途端AVが流れたら嫌だ!死ぬっ!


なにもできずまたしても石化する私。

その横目で夏見は黙々と靴下を脱ぎ始めていた。

素足になってそれから何をするつもり!?
まさか服も脱ぐのっ?

と、気にしてない素振りを装い次の行動に目を見張っていると、夏見は服を着たままベッドの中に入り、フカッと枕に頭を乗せてなんとまあ安らかに目を閉じた。

「……」

「……」

「夏見」

「ん」

「…寝るの?」

「うん」


寝るんかーーい!

えっ、もしかしてここに来たのって家に帰るのが面倒くさかったから?
早く寝たかったから?

そうなの? そうなんでしょ、この草食野郎!!

何はともあれ安堵した私はドッと体の緊張を解した。

「んじゃあ、私も寝よっと」

ニーソを脱いで畳んでソファーの隅に置いて、髪から抜いたシュシュをテーブルに置く。

結いあとのついた髪を手ぐしで整えながらベッドに潜り込み、端っこギリギリのところで夏見に背を向けて横になる。

…うん、やっぱラブホのベッドは気持ちいい。

程よい弾力のマットと枕、そして淡い照明に早くも意識が奪われていく。

良かった。思ってたよりもすぐに眠れそう。

…けれど、至福の心地にまどろんでいたのもつかの間、背後から聞こえてきたベッドの軋む音に私の心身は鞭を打たれたように叩き起こされた。

「こら」

「はっ、はいっ!?」

「素晴らしいテクは」

「え゙っ…?」

えええっ? 実は期待してらっしゃったんですかっ? 草食男子でしょアナタ!!

「あれはっ…つ、つい口走っちゃってその…、…っ!」

夏見の問いかけに言葉を詰まらせていると、不意に髪にふわりと優しい感触が走った。

心臓が高鳴り、呼吸までも詰まってしまう。

その感触はそっと髪を掻き上げ、さらけ出されたうなじに触れた。

「…ひっ」

冷気が染み入り、背筋がゾクリと騒ぐ。

冷たい夏見の指が、私のうなじを撫でている…。

たったそれだけのことなのに、ただならぬざわつきが何度も背中に走って頭の中がパニック状態になる。

「ねっねっ寝るんじゃないの!?」

「この状況で寝れるわけない」

「なっ、じゃあっ、寝るって言ったのは私をおびき寄せるための巧妙な嘘だったのね?!」

「凄い言いようだな。…正解だけど」

「っあ…!」

ギシッとひときわ大きなスプリング音がしたかと思うと、夏見の気配が急速に近くなり、生温かい吐息がうなじに降りかかった。

それと同時に熱をもった舌が滑るように下から上へ這っていく。

激しくなる背筋の痺れにたまらずシーツを掻く。

どんどん熱を高めていく夏見の口は濡れたうなじに吸いつき、時折歯を立てて、絶え間ない刺激を私の体に送り込む。

「っく…! んっ、ぅ…」

急に熱情的になった夏見に翻弄されて脳が揺らぎ、熱に浮かされた吐息が勝手に漏れ出す。

…でも、どんなに気持ちよくても相手は同級生。

背徳感と羞恥心が胸につっかえ、甘ったるい声を聞かれる気恥ずかしさに口を手の甲で押さえる。

戸惑いばかりが込み上げる私とは正反対に夏見は迷いのない手つきで情欲に満ちた行為を進めていく。

「……っ!」

冷えた指が服を捲り上げて、剥き出しになった背中を押すように撫でる。

その指の後を唇と舌が這っていく。

今まで疼いていたそこを直接刺激されて、ビリビリッと快感が弾けて腰が砕けそうになった。

声は押し込められても、吐息やビクつく体を止めることはできない。

羞恥に煽られ、体温がみるみるうちに上がっていく。

「っあ…! あっ、や…!」

そんな私に追い討ちをかけるように、指先がブラのホックを摘んで乳房を下着の圧迫から解放させた。

重力に負けてふるりとこぼれる膨らみと共に心の内で渦巻く熱情まで溢れ出しそうになって、慌てて胸を押さえる。

「もっとこっち来ないと落ちるよ」

「へっ…、うゎっ!」

力の抜けた体を掴まれ仰向けに転がされる。

目の前にいる夏見と視線がぶつかり、私はまた息を詰まらせた。

高校時代の面影が揺らぐ。

湧き出す背徳感。

心音が体中で響いてうるさい。

私はすぐさま顔を背けて熱視線から逃げた。

「ふ、あっ! あ…っ!」

反らせた首に感覚の余韻を呼び覚ます柔らかな舌が触れた。

首筋をたどるように熱感は這い上がり、そして耳にまで伸びていく。

「あっ、ぅあっ、あ!」

尖った舌先が耳をくすぐり、ダイレクトに流れ込む水音や吐息が、鼓膜を超えて脳までも震わせる。

首も背中も耳も、ここまで執拗に愛撫されるのは初めてだった。

走り抜ける未知の感覚にイヤでも体が反応して、悦楽に呑まれていってしまう。

抑え込めば抑え込めむほどいうことのきかなくなる貪欲。

それに理性を喰われていくのが怖くて、私は両手で夏見の肩を押して静止を求めた。

「やっ…!」

けれど、脱力しきった手はあっけなく夏見のしなやかで大きな手に捕らえられ、そのままベッドに押さえつけられてしまった。

鋭い眼差しが着衣の乱れた上半身へと向けられる。

視線を感じただけで乳房の内側で痛いほどの緊張が張り詰め、反射的に胸を隠そうと腕をもたげた。

でも夏見の手はビクともせず、強靭な手枷となって私の手首をベッドに繋ぎとめる。

「やっ…、やだっ、あっ…!」

夏見は心臓の脈動を響かせている胸部に降りていくと、ブラを噛んで乱雑に引き上げた。

布を取り払われたそこで受けた空気がヤケに冷たく感じた。

自分の体がどれほど発熱しているか、まざまざと痛感させられる。

恥ずかしすぎて頭が沸騰しそうだ。

期待感をあらわに浅ましくも立ち上がっていた先端が沸き立つ羞恥に拍車をかける。

「や、だ…っ! 恥ずかし…っあ! あぁあっ!」

その尖りを夏見の唇が包み込む。

理性を押しやって一気に狂い咲く快感。

実を転がし押し潰す舌先が私を後戻りのできない高みへと誘う。

「く、ふっ…! うぅっ! うーっ!」

喜悦を殺そうと唇を噛み締めたところでなんの意味もない。

悦楽に目覚めたしこりを機敏に揺さぶられ、時折電流のように流れる甘噛みの刺激に戸惑う心身を乱される。

ビクビクと腰を浮かせながら、私は首を何度も横に振ってだだっ子みたいに泣き喚いた。

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